■会社概要
商号  一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター(略称:QTEC)
代表  理事長 山中 毅
創業  1948年
設立  1948年
従業員数 288名 ※2024年3月現在

主な事業内容 アパレル製品、生活用品、産業資材など様々な繊維製品だけでなく、
抗ウイルス性試験などの技術を活かし、繊維製品以外も幅広く取り扱う
総合試験検査機関。製品検査、工場指導、監査などの業務も実施。

取材日:2024年 3月 25日

「100年続くQTEC」を合言葉に


「人」に寄り添い、向き合い、技術を持って価値を提供されている、アパレルから生活用品、産業資材分野まで網羅されている総合試験・検査機関である一般財団法人日本繊維製品品質技術センターさまの取り組みについて総務経理部部長の石田篤史さま、総務経理部 総務人事課課長の沼田秀樹さまにお話を伺いました。

左:総務経理部部長 石田篤史様
右:総務経理部 総務人事課課長 沼田秀樹様


■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
当財団は検査機関ですのでものづくりはしておりません。しかし、SDGsが採択されるより以前から、ものづくりされている企業に対して工場監査などに取り組んで参りました。以前より発注先からの監査や調査審査の要請が多くありましたので、我々が実際に工場に訪問し、技術指導はもちろん、衛生面を含めた職場環境や労働者の雇用状況などについてもチェックを行うことがありました。当時はそれほど意識しておりませんでしたが、昔からSDGsの取組みに関わっていたことになりますね。

そして2019年、SDGsに取り組んで、世の中の流れについていくという考えの元、山中理事長の発案により「環境負荷の低減」「社会的価値の向上」「品質価値の向上」「人材育成・従業員満足度」の目標を設定し、サステナビリティの推進を宣言しました。 現在、すべてが達成出来ている訳ではありませんが、ひとつずつ出来ることからチャレンジしています。 その先に「経済的価値」「社会的価値」「環境的価値」の三価値創出を継続的に実現していくと共に、持続的に発展する組織でありたいとの思いを込めて「100年続くQTEC」を合言葉に事業活動を行っております。合言葉は定期的に発信しています。
「100年続くQTEC」合言葉の発信(HP)

取り組んで当たり前。取り組まなければ取り残される



■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
① サステナビリティ推進室の立ち上げ
社内でのSDGs推進のため「サステナビリティ推進室」を2024年4月1日に立ち上げることとなりました。メンバーは東京・大阪・神戸の様々な部署から集まった5名で、私(石田部長)が室長を務めます。 弊財団内でもSDGsやサステナビリティへの意識や認識が不足している部分もありますので、まずは社内に意識を浸透させ根付かせたいと思います。ハードルの低いところから取り組んでいこうと考えております。

② 温室効果ガス(GHG)排出量算定サービス
地球温暖化の課題に対して、2022年から始まった中期経営計画2024の新規ビジネスにおいて「温室効果ガス(GHG)排出量の算定サービスの提供」を採択し、スタートさせることとなりました。こういった活動に取り組まなければ取り残されると感じたのと、新しいビジネスのきっかけに繋がればと思い、取り組みを始めました。 まずは自分たちでやってみようということになり、プロジェクトを立ち上げ、2022年からGHG排出量の算出を行いました。数値化するにあたっては模索の連続でしたが、2021年度並びに2022年度のGHG排出量の算定が完了しましたので、4月からホームページに詳細を掲載する予定です。算定するにあたり、環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームなどを参考にしながら行いましたが、関連する部門から必要な数値を集めなければなりません。実際に数値を収集する現場の担当者は負担が増えることになりますので、主旨を説明し理解を得た上で協力してもらい、QTEC全体で取り組んでいくという雰囲気を作ることに苦慮しました。しかも効果がすぐに表れる訳ではありませんので猶更難しかったです。

GHG排出量算定結果


③ JSFAの活動に貢献
ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)の活動方針であるファッションロスゼロ・カーボンニュートラルに賛同し、活動に貢献していきたいと考え、一昨年前から賛助会員として加盟しました。活動の一環として「JSFA 温室効果ガス排出量 Scope3算定事例集」の作成などにも参画しています。

④ 繊維産業におけるLCA人材育成コンソーシアムに参画
信州大学繊維学部及び繊維系4検査機関と「繊維産業におけるLCA(ライフサイクルアセスメント)人材育成コンソーシアム」を設立し、繊維産業におけるLCAのプラットフォームの作成と環境負荷低減のための支援に向けて活動しています。初年度である今年度は人材育成を目指した活動を中心に行いました。今後はその人材を中心に業界内で世界中の企業が活用できる「ものさし(基準)」づくりに携わっていくこと、そして業界の発展を支えるために皆様を支援できるよう進めていきたいと考えています。

■現在の取り組みはどのテーマに該当しますか?


職員同士がリスペクトしあうことで、社内のエンゲージメントが高まった



■SDGsへの取り組みにより、どのような変化がありましたか?

徐々にではありますが、従業員の持続可能性に関する意識が高まってきていて、ビジネス面でも生活面でもSDGsの考え方を取り入れるようになってきていると感じています。 例えば、冷暖房の効果を持続させるために部屋のドアを開けたままにしない習慣がついたり、電気の消し忘れが無くなったりと、電気の無駄遣いが減りました。 また、理事長が「何事に対しても誠意を持って対応する」「心根が優しい人間になってほしい」と常に発信していることで、職員同士がリスペクトし合って関わりが深くなり、社内のエンゲージメントが高まりました。 それに情報共有も盛んになってきました。従来はお客様に依頼された取り組みを自主的に進めたために、情報が広がりきらないこともあったのですが、今は様々な取り組みをプロジェクトとして位置づけ、情報共有することで皆が把握できるようになりました。その結果、解決策や取り組みを促進するためにイノベーションが活発化しています。

■SDGsアクションの推進について課題と感じていることはありますか?
① 意識と教育

従業員の一部にはSDGsについての知識や理解が不足していることがあり、適切な行動に繋がりにくい場合があります。そのために教育や情報発信を積極的に進めていきたいと思います。 SDGsアクションのゴール設定は難しいですが、今年よりも来年、という考え方で定期的に評価をしながら持続可能性を弛まなく追及していく、それが100年続くというのが一つのゴールかもしれません。


② パートナーシップ

SDGsの達成には政府、企業、機関といった様々なステークホルダーが協力し合うことが必要と考えています。そのためにも各所との連携と協働が重要ですが、具体的な取り組みが出来ていないことが課題です。


③ 目標の設定

組織である以上、目標やミッションがありますし、一方では異なる部門と様々な立場の従業員が存在しています。各々が有機的に連携して取り組むことが望ましいのですが、それぞれに想いややりたい事もありますので、それをどのような形にして取り組んでいくかが課題です。 経済活動でいえば収益性が最優先だと思いますが、SDGsは何を優先すべきなのか難しい。個人の努力レベルで終わってしまうのであれば財団として取り組む意味がありませんので、従業員の想いややりたいことをどのように組み上げて、組織として有機的に取り組めるかを模索しているところです。


■SDGsの推進に際し、関西ファッション連合に期待することはありますか?

アパレル業界はSDGsの取り組みが遅れていると言われることもありますので、より活性化できる取り組みを行っていきたいと考えています。 そのためには社会や顧客のニーズを多面的に捉える必要がありますので、KanFAの意見は貴重ですし、SDGsに取組んでいる企業の取組み事例や成功事例などを共有いただける機会はありがたいので、まずは情報交換を進めていきたい。 そしてSDGsの達成に向けては様々なステークホルダーと協力していく必要があると思いますので、相互に支援や協力のできる関係性を築かせていただきたいです。

■取材者あとがき

組織のトップである理事長のメッセージをきっかけに従業員の意識も行動も変化し、その先にある事業においても新しい取組みが生まれています。SDGsに取り組まなければ生き残れないという強い想いと共に、経済・社会・環境の三価値創造の実現への取組みが「100年続くQTEC」を牽引する原動力になっていると感じました。これからも取組みに注目したいと思います。取材協力ありがとうございました。