■会社概要
商号 モリト株式会社
代表 代表取締役社長 一坪 隆紀
創業 1908年(明治41年)6月1日
設立 1935年(昭和10年)12月17日
従業員数 1,328名
事業内容 グループ会社の経営戦略策定、経営管理およびそれに付帯する業務
     グループ会社は服飾資材の提供から車や鉄道などの輸送機器や
     映像機器分野へと裾野を広げ、生活に溶け込んだ事業を展開

■取材日:2022年 2月 3日

「パーツでつなぐ、あなたとつながる、未来につなげる」を経営理念に、未来に繋がる取り組みを


創業以来110年以上ハトメ・ホック・マジックテープ®などの服飾資材をはじめ、フットウェア資材、シューケア・フットケア商品、輸送機器資材と多彩な商材を全世界に供給されるグループ企業、モリト株式会社さまの取り組みについて、執行役員事業戦略本部 副本部長の森弘義さま、藤原まゆみさまにお話を伺いました。

■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
2020年中期経営計画にてサステナブル・エコにこだわったモノづくりの事業戦略を掲げた事がきっかけです。 弊社では以前よりエコ素材による商品開発を行っておりましたが、明確なエコの基準がありませんでした。社会的な責任として、改めてサステナブル・エコという大きなテーマに対し、17項目の中で具体的に携われるものを検討した結果、 「CO2・エアー」「海洋・オーシャン」「森林・フォレスト」の3つをテーマとした“C.O.R.E.”(コア)をスタートしました。

※C.O.R.E.とは 美しい地球と限りある資源を未来につなげる包括的なアプローチであり、モリトグループの環境へのコミット(Committed to Our Resources and Environment)を意味しています。

海のゴミ、捨てられる廃漁網をアップサイクル 価値ある製品へ


■具体的にはどのような取り組みを行っていますか?
まず、海洋プラスチック問題の1つである廃漁網を原材料とした再生樹脂を使って、副資材、生地、雑貨の製造に着手しました。海洋プラスチックごみというとビニール袋をイメージされると思いますが、実はその約4割は漁網です。 漁網はポリエステルかナイロンで作られています。それをボタンなどへの再生を検討するにあたり、廃漁網を回収しペレットにしている企業にコンタクトを取った事から協業が始まりました。2020年4月に糸付けボタンから始まり、紐止め、バックルや付属品、それ以外にもペレットから糸を作り生地も製造しています。雑貨では携帯ケース、ハンガーやシューキーパー、サーフィン関連商品などもあります。
製品としては、兵庫県の豊岡鞄に廃漁網からアップサイクルした生地を使用いただき高品質な鞄を製造、販売されています。伊丹空港内のショップやモデルのTAOさんとのコラボ商品の提案などもされており、当社の生地をマスコミに取り上げて頂きました。その用途はアウトドア用品、アパレル商品、靴など多岐に広がっています。
また、エアーをテーマとした取組では水・化学薬品・電気等の資源の削減の抑制等、より持続可能な製造プロセスに着手しています。当社が扱うハトメなどはメッキを施しておりますが、メッキには大量の水と電力を使用します。従来の製法を見直しその使用量を50%に削減する方法の開発を行っています。小さな動きですがCO2排出量削減に繋がればと考えています。

廃漁網
廃漁網から作ったペレット
ペレットから作った副資材
アップサイクル生地を使った豊岡鞄
様々なスポーツ・アパレル商品の提案
様々なスポーツ・アパレル商品の提案
神戸シューズにも使用

■現在の取り組みはどのテーマに該当しますか?

基準がないSDGsの取組に独自の基準と明確なトレーサビリティで信頼を獲得


■SDGsへの取り組みにより、どのような変化がありましたか?
当社のSDGsに賛同頂ける新規取引先が多数生まれました。基準がないSDGsの取組に対して、我々の中で廃漁網とバージン素材の混合率の基準を作ったこと、また仕入れ先、製造場所等のトレーサビリティを公表することで信頼を頂けたと思っています。

SDGsはブームで終わらない活動です


■SDGsアクションの推進について課題と感じていることはありますか?
SDGsの取組に賛同頂けるお客様が増えた一方で、まだまだSDGsに関心が低いお客様がそれ以上に多いと言う現実があります。社内でもスタート当初は、「高くて売れるのか」との声がありましたが、国連発信のSDGsはブームで終わらない活動であり、高くても欲しいと思われるような付加価値をつけたい。徐々に世界の動きは理解されつつあります。お客様も様子見的なところもあり、時間がかかると感じています。ビジネスとして成り立つ事を目指し、消費者が購入しやすい価格で提供できるよう、良い循環を創っていきたい。
豊岡鞄との取り組みの延長として社内から人員を募り、昨年11月には海岸での清掃活動を行いました。プロジェクト以外の従業員も参加し、現状を見る事で自分たちがやらなければと感じてもらうことができました。小さな取り組みですがゴミの回収、地域活性の取り組みを兵庫県から日本全国へ広げていきたいとの思いがあります。今後も定期的に継続し広がって行くことを期待しています。

今子浦での清掃活動

■SDGsの推進に際し、関西ファッション連合に期待することはありますか?
今回はオーシャンの取り組みを取材、紹介いただきますが、エアーやフォレストがテーマの取り組み、新しい商材の開発などを行っていきますので、定期的に紹介、発信できる場を作って頂きたい。

■SDGsの推進に際し、関西ファッション連合に期待することはありますか?
海洋ごみの研究からスタートした活動は提案から2年余りを経て様々な地域、企業を巻き込む活動に広がっています。基準がない取り組みだからこそ自分達で基準を明確にされるその姿勢には説得力がありました。「現状を体験する事で、誰かがやってくれるだろうから自分達がやらなければに変わる」とても印象的な言葉でした。取材協力ありがとうございました。