■会社概要 商号 株式会社ジオン商事 代表 代表取締役 川端康資 設立 1968年(昭和43年)6月10日 従業員数 561名(ジオングループ会社255名を含む) 事業内容 婦人服の製造、販売(卸売、小売) ■取材日:2020年9月28日
ハンガーのリユースに加えてSDGsがテーマの新ブランドを開発
海外のアパレル製品の輸入からスタートし、現在では数多くのレディス向けブランドを展開するジオン商事株式会社さまの取り組みについてSDGs推進本部のメンバーである中村成男さま、藤本隆司さま、氣谷章男さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
昨年のことですが2019年6月20日の朝礼で川端社長がいきなりSDGs推進本部を立ち上げると宣言されたのです。その時点ではほとんどの社員がSDGsという名前は聞いたことがあるが、何をすれば良いのかという知識はありませんでしたが、「未来を考える」というテーマに興味を持った有志が集まりプロジェクトチームが結成されました。社長の意向では若い人を中心にということだったのですが、結果的には40代~50代の社員も結構集まり、現在は15名で構成されています。
先ずはメンバーがSDGsのカードゲームを体験することで環境、社会、経済のバランスを取りながら持続可能な成長を目指すという考え方を勉強しました。そして2019年12月には東京、大阪、福岡に在籍する社員約130名に対してカードゲームを実施。合わせて会社としてどんなことに取り組めそうかというアイデアを募るアンケートも実施しました。
また当社には別会社として販売を専門に行なう会社があるのですが、こちらに在籍するスタッフに対しては、SDGsの考え方を理解してもらえるような冊子を作成して配付しています。また独自にポスターも制作し社内各フロアに掲示しています。このような取り組みを通じて、常にSDGsの意識を高めることに取り組んでおります。他にも最近の学生はSDGsへの関心が高いので、リクルート活動の場においても当社が取り組むSDGsの内容をお伝えするよう心がけております。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
先ずは我々にとって一番大きな課題として、プラスチックハンガーとハンガーカバーについて検討しました。取引先のハンガーメーカーさんも含め、色々な方法を考えた結果、プラスチックハンガーは洗浄してもう一度使うリユースの仕組みを構築。ハンガーカバーは回収してリサイクル原料として活用する仕組みを整えました。
次にショッパーや包装用の袋ですが、こちらは順次プラスチックから紙への転換を進めています。また用紙は適切な森林管理を行なっているFSC認証のものを使うようにしています。
またどうしてもプラスチックを使用しなければならない資材については、バイオマス原料のものを検討しています。我々はこのような取り組みを通じてできるだけプラスチックの使用を削減する努力をして参りたいと考えております。
そして商品では「つながるプロジェクト」というタイトルでTシャツにサスティナブルなメッセージを入れたものを作成し、収益の一部を今年はオリンピックイヤーでもありますので障がい者スポーツ団体へ寄付する取り組みを行なっています。この商品は「IVISUTO(イヴィスト)」というブランドで展開していますが、まだSDGs関連の商材が少ない地方の百貨店さんに賛同いただいております。
さらに新しいブランド「yueni(ユエニ)」ではSDGsの考え方そのものを商品化し、生分解素材の使用などにより、サスティナブル意識の高い方をターゲットに展開しています。但し、どうしてもコストがアップしますので、ブランドのコンセプトや背景を丁寧にお伝えすることで、サスティナブルな市場を拡げていきたいと考えています。
11月にデビューする「mielina + ミエリナプラス」は自分らしく生きる女性を輝かせたいという想いから立ち上げたブランドです。素材はサスティナブルなものから日本の職人が作り上げる生地など産地の支援にもつながるものを選んでいます。ファッションを通じて社会貢献できるブランドに成長していきたいと思います。
一方、本社財務部で取り組んでいるタンザニアでの鉱山プラント開発のプロジェクトの関連で、ムアンザにある鉱山技術を学ぶ学校開設に対して資金面の支援を行なっています。ここはビクトリア湖の南湖畔にある町で、開校式典にはタンザニアの教育担当大臣も列席されました。この取り組みは4番「質の高い教育をみんなに」というテーマに繋がっています。また当社では以前からジオンビジネススクールという社員教育の仕組みを持っており、通信教育や授業料の補助など、社員が学びやすい環境も整えております。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
この中で特に優先順位はないと思いますが、婦人服の製造と販売という事業の中で、先ずは目の前のこと、自分たちに出来ることに取り組んでいますので、結果的には環境対策のアクションが多くなっていると思います。社長からは「SDGsの活動を通じて会社が良くなっていくことが成果である」とコメントいただいていますので、会社が良くなっていくことで結果的に社会へ貢献できればいいなと考えています。
専門部署がないのでみんなのアイデアで取り組んでいます
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
すべての事業グループから有志で参加したメンバーによって自主的に活動しています。そのような意味では営業、広報、品質管理、財務などそれぞれの部署が、それぞれ出来ることに取り組んでいますので、どこかの部署が推進しているという事でもないですね。今後は社内にグループウェアの導入を計画していますので、これまでよりも密に情報交換をしながら、同時にペーパーレスにも取り組んでいきたいと考えています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
冒頭にお話しましたが、全社員でのカードゲーム体験や、社内でのポスター掲示、また販売スタッフに向けた冊子の配付などを行なってきましたが、最近ではどこかの部署が新しいアクションを始めると、社内で協調が拡がるようになってきました。最初にSDGsを推進する固定的な部署を作らなかったので、自然とパートナーシップで互いに支援する環境になったように思います。社外に向けてはサスティナブルをテーマにしたブランドを立ち上げていますので、本業を通じて理解や賛同が拡がることに期待しています。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
我々のメインのお客さま層である専門店さんの関心がまだ薄いように感じています。個人店の場合は比較的従業員も少なく、自分の店舗運営だけでも仕入れ、陳列、接客、販売など一日中忙しくされていることが多いです。その上に、SDGsの理念をお伝えして共にアクションしていただくには、我々の啓蒙活動がまだまだ必要であると実感しています。
「商事」という名のもとグローバルに自由に発想します!
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
個人的には5番「ジェンダー平等を実現しよう」というテーマについては、今後高いレベルで取り組んでいくべきであると考えています。
また12番「つくる責任つかう責任」、14番「海の豊かさを守ろう」、15番「陸の豊かさも守ろう」といった環境に関連するテーマについては、婦人服の製造、販売という事業の立場からもさらに推進していく必要を感じています。そのような意味ではSDGsをコンセプトとした新しいブランドを通じて、経済という観点でも成功させていくことが会社としての大きなテーマになると思います。
当社の社名には「商事」つまり商いごとという言葉が入っていますが、単に服を作って売るという発想ではなく、常に商売のネタを探すという視点から、ロシアでの航空機リース事業や、アフリカでのプラント事業などにも取り組んでおり、これからも他社にないグローバルかつ自由な発想でSDGsの活動にも取り組んでいきたいと思います。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
自社でできることは限られていますので、SDGsの推進には17番「パートナーシップで目標を達成しよう」というテーマが不可欠であると考えております。そのような意味で、他社との繋がりを見つけることができる場所、機会、紹介、橋渡しなど様々な取り組みに期待しています。繊維にはロットの問題もありますので、類似の取り組みをされている会社さんを含めて、沢山の方と出逢い、繋がり、共にアクションできることを楽しみにしています。
■取材者あとがき
SDGsというテーマに対して、自分が関わりたいという有志のメンバーで構成されているため、取材においてもどんどんコメントが湧き出し、義務感ではなく楽しみながら活動されていることを実感しました。また社内のポスターや冊子作りなど情報の見える化にも取り組むことで、常にSDGsを意識する環境づくりに工夫されているのが印象的でした。取材協力ありがとうございました。