■会社概要
商号  FYS株式会社
代表  代表取締役 古池 邦夫
創業  2001年 1月
設立  2002年 5月
従業員数 30名(内、パート18名)※2023年4月現在
事業内容 アパレル資材製造販売

取材日:2023年4月28日

FYSから出たハンガーは一本たりとも破棄しない


プラスチックハンガー、ドレスパック、フック、フィルムパッケージ等のアパレル向けの服飾資材やプラスチック雑貨、子供用品、工業用樹脂部品等の企画・製造・販売をされているFYS株式会社さまの取り組みについて副社長の大井明浩さまにお話を伺いました。

■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
プラスチックハンガーを廃棄する場合、産業廃棄物処理法を遵守して廃棄業社は許認可が必要となるのですが、その状況に鑑みて、取引先であるイオングループ様の当時担当部長より広域認定の取得を打診されたのがきっかけです。広域認定制度とは製造事業者が自社製商品を広域的に回収してリサイクル又は適正に処理ができる制度で、産業廃棄物処理に関する地方公共団体ごとの許可が不要となる環境省発行の特例制度です。
実は広域認定という言葉はその時に初めて聞きました。そこで自分なりに調べてみたところ、弊社のこれからの進む道を考えた時に、取得すべきだと判断し、取得に向けて取り組みました。その結果、2017年にハンガーメーカー第一号として広域認定を取得することができました。
廃プラ問題がクローズアップされる中、各企業様としてもCSRの観点から遵法な取り組みを要求されるのは当然です。将来的には同様の取り組みが増えていくと思いますので、弊社としては広域認定取得を営業活動の重要戦略の一環として活かしていきたいと考えております。
しかし、私も従来から環境配慮への意識が強くあったわけではなく、広域認定を取得したことによって意識が変わっていきました。それからは廃プラ問題を何とかしよう、従業員の意識を変えよう、企業として環境への取り組みをもっと細やかに整備しよう、といった意識を持つようになりましたし、その想いや取り組みを、アパレル企業1社ずつに情熱を持って伝えていくことに軸足を置くようになりました。各社とも環境に対する意識は希薄でしたが、賛同いただく企業がどんどん増えてきています。

広域認定制度運用フローチャート

新理念「関係企業と共に、プラスチック資源の再利用と、CO2削減に向け、環境問題に取り組みます」


■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
① 「APRES(アプレス)〜ハンガーの回収とリユース・リサイクルシステム〜」の運用
アパレル企業が百貨店やショッピングセンターなどの店舗に納品する際、自社のハンガーに掛け替えを行っています。納品時に使用していたハンガーは一部再利用に回していますが、廃棄業社に依頼し破棄することが多いです。そこで破棄が多いことに着目し、弊社では弊社ハンガーをご利用いただくことで、契約した広域認定許可を保有する物流会社が全国的に回収を行い、弊社のリユース・リサイクルセンターに運搬しています。その後、リユース可能なハンガーはリユースし、汚れや破損等でリユースできないハンガーはリサイクルし、再度ハンガーや異なるプラスチック成形品に生まれ変わっています。弊社ではAPRESというスキームで廃プラとCO2排出の削減に取り組んでいます。
一方、アパレル企業にとっても、不要なハンガーは弊社が回収しますので、従来発生していた破棄に関する廃棄業社への破棄代又は運送料等諸経費も削減が可能となります。
また、2022年4月に施行されましたプラスチック資源循環促進法では、排出量が多い企業は適正に排出処理していることを証明する必要があるのですが、弊社が広域認定事業者として代行して政府に報告を行いますので、その事務負担と排出量管理業務が軽減されるうえ、遵法な形での運用が可能となります。
そして廃プラ削減に取り組んでいると宣言できますので、大きな意義があると考えています。
APRESに取り組んでいただける企業には、回収したハンガーの数量とそれをリユース、リサイクルした数量から、CO2と廃プラがどれだけ削減できたのかをマンスリーで報告しています。
数値でしっかりと見える化することもとても評価していただけています。
この取り組みを多くの企業に宣伝している過程で、コストが合わないのでは?と懸念されるのですが、商品自体の低価格及び前述の諸経費削減を謳い納得されます。その課題は必ず克服できると説明し、今はアナログですが一社ずつ訪問して過去のデータを示し、こういう取り組みはいかがですか?とご説明していけば、時代背景とともに利用して頂ける企業さまも増えていくと思い、情熱を持って取組んでいます。


② 環境配慮型原料ハンガーの開発
東京ニットファッション工業組合から、合同展で使用するハンガーをサステナブルな素材で作れないかと相談がありました。生分解性素材である酢酸セルロースを使用してハンガーを試作してみたところ、綺麗な仕上がりとなり、その結果、東京ニットファッション工業組合の合同展でのハンガーは全て弊社のハンガーをご利用いただくことになりました。
APRESは販売・回収・リユース・リサイクルするスキームで廃プラ削減を目指していますが、ハンガーはプラスチックですので次のステップとして、環境配慮型素材のハンガーを作りお客様に提案できるよう、本格的に研究を進めています。 APRESのスキームで循環して弊社に戻ってきたハンガーも、最終的にリユースできなくなった時は原料メーカーに戻すことで再原料化が可能なので、更に循環の輪が広がります。ただ、コストが高くなることが課題としてありますが、依頼があった時にご提案できるよう、研究を進めていきたいと思います。
生分解性素材を活用した環境型ハンガーモデルのイメージ


③ 理念の刷新
広域認定を取得したことにより、環境に対する社内向け講習会を開催しました。従業員の意識を変えるため、新たな意識を注入するために開催してきました。
同時に、環境に対する取り組みを強化するということで、会社の理念も刷新しました。

■現在の取り組みはどのテーマに該当しますか?