■会社概要 商号 株式会社東方貿易商行 代表 王 永發 創業年 1968年(昭和43年)10月 従業員数 18名 事業内容 婦人ニット、カットソー製造卸販売 ■取材日:2021年 3月 17日
創業以来一貫して天然素材でのものづくりにこだわりを持ち、中国無錫の自社工場の機動力を活かし、商品を提案されている株式会社東方貿易商行さまの取組みについて、代表取締役社長の王永發さまにお話を伺いました。
天然素材のミセスニットを神戸から ~ブランドロゴにも豊かな自然への思いを込めて~
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
SDGsについては言葉としては良く耳にしていましたが、2年程前に大手百貨店がすべての取引先の経営者を集めSDGsの説明会を開催され、そこに参加したことが大きなきっかけとなりました。SDGsの重要性と今後の取組の方向性を聞き、意識がさらに高まりました。こちらの百貨店ではSDGsへの取組を進めており、SDGsを取り入れた企画への協力依頼などもあり、提案を行っています。
自社生産の強みを活かした資源活用でSDGs お客様に喜ばれる企画を提案
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
今回のインタビューをきっかけに改めて、当社のSDGsの取組を見直してみました。まず、当社では「天然素材」を1つのキーワードとして経営をし、天然素材に特化した商品を作っています。「Naturale」(イタリア語で天然素材の意)というブランドのロゴは太陽と大地、その間に育まれた豊かな自然を意識したデザインにしています。これもSDGsに通じるところかと思います。
当社は元々シルク商品が得意であり、その流れから、ウール、コットン、麻と天然素材の取り扱いを広げてきました。結果論かもしれませんが天然繊維を活用することでSDGsに繋がるものづくりを行っています。
また、ニット製品のものづくりの工程上、どうしても残糸が沢山でてしまいます。この糸を上手く活用することは出来ないかと考え、様々な色の商品があっても面白いのではないかと発想し、ストールやアームウォーマーなどファッション小物を作りました。1枚からでも製造できる自社生産の強みを活かした多色展開の商品はお客様に好評を頂きました。捨てるのではなく、寝かせるのでもなく資源を有効活用できる企画をお客様に提案しています。
また、商品を作るにあたってはデザインを意識し過ぎたり、拘りが強いあまり無駄になる、環境に負荷をかける事もあると感じています。担当者には許容範囲を意識するようにお願いしています。
当社では経営理念として「働く仲間を豊かに、まわりを笑顔に、社会を大切に」を掲げています。まずは精神的にも経済的にも豊かになる事を目指し、経済と暮らしのバランスを大切にしています。当社では社員に子供さんの行事などは最優先することを進めており、家庭を大切に出来る働き方を推奨しています。また、東京支店では完全フレックスタイムを導入し、働きやすい環境を実現しています。
女性の活躍推進はもちろん、学ぶ意欲のある社員を応援する取組も行っています。セミナーの受講、資格取得、読書の機会を社員には進めています。費用補助もしており経営指針書に明記しています。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
全てが絡み合っているのでこれに重点を置いているという事は難しい。経済活動は必要であり、また社会活動も両立したい。環境も大切であり、どうバランスを取るかが大事なのではないかと思っています。
SDGsは誰かが考えるのではなく、全員で考える
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
中小企業では社長が先頭に立ち旗を振り、全社員に考えてもらう、意識してもらうことが大切だと思っています。1つの部署ではなく全員で考える事が重要です。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
社内では勉強会を開催し、意識を高めています。当社では改善提案を社員に義務付け改善に取組んでいますが、今後はSDGsをテーマとした提案を義務づける事も良いかと思っています。本日のインタビューを機会に私自身、様々な案が浮かんでいます。社外では工場にも残糸の活用がSDGsに繋がる取組である事を共有し、今後の取組のきっかけにしていきたいと思っています。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
SDGsを考えるきっかけになったのは百貨店の勉強会でしたが、一方で百貨店などの衣料品売り場では夕方5時以降お客様は殆どいない状況の中、営業をされています。閉店までの数時間はエネルギーや販売員さんの働き方の観点からは無駄な部分が多いのではないかと感じています。経済活動とのバランスがとても難しいのですが、日本の衣料品売り場の営業時間は必要に応じて改善が必要ではないかと思っています。経済活動優先から意識を変え、働き方を見直す事は大切ですが、なかなか進みません。
人類にとってSDGsは永遠のテーマ 皆が意識し、取り組む事がスタート
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
17の項目は非常にハードルが高く、あと10年で本当にゴール出来るのでしょうか。人類にとってSDGsは永遠のテーマではないでしょうか。2030年までに人類全てがSDGsを“知る”“意識する”事がゴールであり、皆が意識し、皆が取り組み始める2030年が本当のスタートになるのではないでしょうか。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
今回の取材は改めてSDGsを考えるきっかけになり、当社の取組みを見直すことで多くの気づきがありました。SDGsは我が社とは関係がないと思われている企業さまの中にも、案外、既に取組んでいる事があるのではないかと思います。取組み事例を紹介する事は業界各社の気づきに繋がるのではないでしょうか。情報を発信し、気づいてもらう事が大切です。まずSDGsを意識、理解してもらう事がKanFAの大きな役割かと思います。
■取材者あとがき
「何のために働くのか」を考えたとき、家族が幸せになり、働く仲間とその家族も笑顔になるそんな経営を目指そうと思われた王社長。経営もSDGsもまずは身近な所から、出来ることから取り組み、その先にご自身も社員も、社会も笑顔になる「三方よし」を実現して欲しいですね。取材協力ありがとうございました。