■会社概要 商号 林田株式会社 代表 代表取締役社長 林田誠司 創業 1940年(昭和15年) 設立 1947年(昭和22年) 従業員数 50名 事業内容 アパレルメーカー。 紳士カジュアルブランドLeCENT(レセント)、MAGNOLIA TOKYO(マグノリアトウキョウ)、samscuri(サムスクーリ)、HAND ARTS(ハンドアーツ)を有し、全国の有名百貨店・専門店を中心に広く展開している。また一方、有名アパレルに対してOEM生産をしている。 ■取材日:2020年9月15日
最高級のカシミヤ衣料の端布は再生毛布に生まれ変わります
最上級のカシミヤ素材から生まれるメンズカジュアルを全国の百貨店に展開し、多くのブランドファンを持つ林田株式会社さまの取り組みについて代表取締役社長の林田誠司さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
実は元々やっていた取り組みがSDGsの考え方にピッタリだったんです。当社では天然のカシミヤ素材を原料にして紳士用アパレルを製造しているのですが、製造工程でどうしても端布が発生することになります。その端布を貯めておいて、ある程度貯まった段階で毛布を作っているのです。
具体的にはカシミヤの端布を半毛することで一旦糸に戻しますが、どうしても糸が短くなるので強度を保つためにウールを少し混ぜて再生糸を作ります。その糸を使って柔らかく、暖かい毛布が生まれることになります。濃い端布はワインレッドや紺色など濃い色の毛布へ、薄い色の端布はベージュやグレーなど薄い色の毛布に生まれ変わります。20年以上前からもったいないという精神で取り組んできたこの取り組みは、まさにSDGsに通じるものではないかと考えております。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
百貨店で販売しているカシミヤのウェアについては、先ずお直しのサービスを提供しています。もともと天然素材であるカシミヤは長年着ていただける素材ですが、何シーズンも愛用いただく中で虫食いに合うこともあります。そのようなことに備えて当社の工場では過去10年間に企画製造したすべてのカシミヤ製品の原料をストックしており、新品同様に修理・再生することが可能です。
また既製品の他にオーダーの注文に力を入れています。欧州にも高級ニットブランドはありますが、お客さまには袖が長すぎるなど体型にフィットしないケースも存在します。そのような時に色、サイズ、柄などオーダーいただくことで自分だけの一着を作り出すことができます。この仕組みは売れないものを作らない、売れてから作るという発想に基づいていますので、まさに12番の「つくる責任つかう責任」に沿ったものであると認識しています。
さらに今後は商品を入れる袋やキーパーなどの副資材についても、天然由来のものに変更することを検討しています。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
これは三つがそれぞれ密接に関係しているので、優先順位を付けたり、切り捨てたりすることは出来ないと考えています。もともと当社は「天然素材を活かした製品を作っていこう」という考え方がベースにあり、カシミヤ、シルク、海島綿などを使用しています。化学繊維にはそれぞれ特徴もありますが、同時に環境負荷も小さくないという側面があるように思います。我々は化学繊維に比べて環境に優しい天然素材を責任をもって製品にしていきたいと考えております。
節約は義務ではなく自分ごととして前向きに取り組みを
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
小さな会社ですので、専門の部門はありませんが、会社全体の取り組みがSDGsに合致しているという意識もあり、この気持ちで今後も取り組みを進めていこうと考えています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
社内については、昨今の状況もあり工場のLED化の推進で節電を行ったり、パッキンケースを削減するなど節約に取り組んでいます。とはいえ節約、節約だけでは後ろ向きな取り組みになりますので、これらの取り組みで浮いたお金を賞与のようなカタチで従業員に分配させていただきました。このことにより、今だけの活動ではなく景気が回復した後も、自分たちの行動が環境対策にも繋がっているという前向きな気持ちで取り組めるようになれば嬉しいと考えています。
取引先については大手企業が多いので、先方からレジ袋の有料化や通い箱の活用など提案いただく機会が多くあります。当社で対応可能なことはひとつひとつ取り組むようにさせていただいております。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
テーマが17個もあるので当社が出来ることは少ないと思いますが、12番の「つくる責任つかう責任」を軸にしながら出来ることは全力で取り組みたいと思います。5番の「ジェンダー平等を実現しよう」については昔から販売現場も工場も女性が頑張っている会社でもありますし、男女で給料格差もありませんので実践できていると思います。また当社の工場長も女性ですし管理職にも女性がいます。この部分は進んでいるといえるかもしれませんね。
社是「良/感/伝/承 いつまでも 生きている いいもの」を実践するECサイトとOEMへの取り組み
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
2030年は少し遠すぎるので10年先ではなく1年1年頑張っていこうと考えています。現在はECサイトでの販売を伸ばすこと、OEMの受注を増やすことを目標にしています。ECサイトについては百貨店でも展開しているオーダーメイドの仕組みをうまく取り入れることで、良い品を長く使っていただけるお客さまの体験を増やしていきたいと考えています。OEMについては日本製をセールスポイントにするブランドのお役に立てるよう、高品質・小ロットのオーダーに対応していきいきたいと考えています。
当社には「良/感/伝/承 いつまでも 生きている いいもの」という社是がありますので、これまでもこれからもこの社是を実践できるよう着実に取り組んで参りたいと思います。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
当社は製造卸売業から製造小売業へ変化をして参りましたが、この業態を維持するためには企画、デザイン、製造、販売とすべての工程でプロの技が必要になってきます。このプロの技こそが生産性を上げてくれる鍵になると思いますので、これからも能力を高めてくれる研修やトレーニングや認定試験などの機会をどんどん提供していただければと思います。
また我々は製造から小売まで一気通貫のビジネスモデルを構築することで、収益構造を改善してきましたが、梱包資材や運送費用など小さな会社の交渉力ではなく、組合として団体交渉力によってコスト構造を変えることができれば有り難いと思います。このような取り組みを通じて業界全体で、個人の能力と会社の交渉力が高まることに期待しています。
■取材者あとがき
天然素材であるカシミヤを製造小売という一気通貫の仕組みで市場に提供することで最大のコストパフォーマンスを実現。また端布を貯めて再生毛布を製造するなど、まさに無駄のない取り組みが印象に残りました。「良/感/伝/承 いつまでも 生きている いいもの」という理念がそのままSDGsに繋がっているように思いました。纏まりのある素敵な会社ですね。取材協力ありがとうございました。