商号  三喜商事株式会社
代表	代表取締役社長 熊谷 嘉延
創業	1948年
設立	1956年2月6日
従業員数 335名 ※2022年7月1日現在
主な事業内容 ・ヨーロッパを中心とする、海外のファッション製品の輸入卸、小売、および輸入代理店業務
       ・ファッション製品・コスメ関連製品・フレグランス製品関連・ペット関連製品、リビング関連の企画、製造、販売
       ・関連会社にて食品の輸入卸業務

■取材日:2023年1月23日

ライフスタイルに新しい夜明けをもたらす


1956年の設立以来、ヨーロッパを中心とする一流ブランドを日本に紹介し、さまざまな交流から生まれたネットワークや信頼関係を通して、ファッションという新しい文化を提案されてきた業界の草分けで、「ライフスタイルに新しい夜明けをもたらす」をミッションに、新しいライフスタイルの創造に挑戦されている三喜商事株式会社さまの取組みについて、チーム「アルヴェリ」の皆様にお話しを伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
弊社は今年創立68年になるのですが、一貫してヨーロッパのインポート商品を中心に卸・小売りを行ってきました。昨今のアパレル不況の中、アパレル事業だけではなくライフスタイル全般に事業を拡大していこうという方針の中で、昨年新規事業の社内公募がありました。そこで大阪の部署違いのメンバーが集まって「ファッションで世の中のためになることが出来ないか」とチームを立ち上げたのがきっかけです。

その後チームで色々と試行錯誤を繰り返しましたがどうにも行き詰っていた時、メンバーの一人が以前に関西ファッション連合が開催していた「エコ・エシカルファッション展」で、間伐材から和紙の布を製作する会社の事を思い出し、木材が原料の和紙から生まれる「木糸」があると聞いて凄く新しいと感じました。

「木糸」は環境に優しく安心して着られる自然の素材で、ファッションを知っている私たちがそれを服にすることで世の中の役に立つSDGsなプロジェクトの姿が見えてきました。そこからチームが動き出し、「着て始めるSDGs」「木から作った次世代ブランド(Alveri)」が生まれ、未来に向けて世の中の役に立つ価値のあるプロジェクトとして認められ、厳しい社内審査を突破して事業化がスタートしました。

【着て始めるSDGs】 木から作った次世代ブランド「Alveri(アルヴェリ)」


全員で和紙の布様の工場を訪問したり森林組合の方から原料になる間伐材の特性を学んだりと、原料の持つ多くの特徴(吸湿性、高い紫外線カット率、高い抗菌性、超軽量など)を理解して、環境に優しく人にも安心して着られる本当に自然な素材から生まれた服作りを目指していきます。

また、物づくりは原料の調達からデザイン・縫製まですべてメイドイン大阪で行っています。「アルヴェリ」を通じて地元に仕事が回り地域の活性化に貢献出来ればいいなと思っています。

今後は色展開を予定していますが、染色も資源を大切に自然にこだわって、ワインの搾りかすや桜の木の枝など、食材や植物の加工後の廃棄物で染める計画です。色の再現性は難しいですが、画一的な素材と違い、一枚一枚違うものとして愛着をもって育てていく感覚を大切にしたいと思っています。

元々弊社は大量生産とは違い個性のある海外ブランドを、服のストーリーを理解して着ていただけるお客様に丁寧に販売するスタンスなので、そんなストーリー性に魅力を感じてもらい、若い世代に手に取ってもえるようなカラー展開を考えています。その点でも「アルヴェリ」の事業は弊社に合っていると思います。

ファッションでSDGsに貢献できることはないか



■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?

ライフスタイル全般に事業を拡大するために社内だけでなく広く社外に向けて、オープンイノベーションという形でスタートアップ企業と一緒に何か新しいものが出来ないかと取り組みを続けています。 その活動の一つとして、サステナブルな循環型ファッションの実現を目指すファッションコミュニティ「NEWMAKE(ニューメイク)」との取組みがあります。

服を通じてそのブランドの大切な想いと物語のバトンを繋ぐ新たなコミュニティを創出し、企業と協業して衣服ロスを減らしていくとする設立趣旨や、「サステナビリティとは服や雑貨が作られた『背景・思いを知る』ところから始まる」という考え方に共感して、当社のブランド(オールドイングランド・ミッソーニ)の洋服を提供して、アーティスト集団との新たな価値づくり(=アップサイクル)に参加しました。

社内的には、社員の働く環境を改善するためどこでも仕事が出来るようフリーアドレス制を導入。続けて社内フロアを改装して社員のコミュニケーションエリアが設けられました。使い方は自由で、仕事に使ったり雑談したりと、以前より社内の風通しが良くなったと感じます。今月からはフレックスタイム制も始まり、ますます働きやすい環境になると思います。

また、弊社には「公益財団法人堀田育英財団」があり、2006年の設立以来、欧州で芸術文化を学ぶ日本人留学生や欧州からの留学生を支援するため奨学金を給与する活動を行っています。



■現在の取り組みはどのテーマに該当しますか?


■SDGsへの取り組みにより、どのような変化がありましたか?

1/31~2/1にビックサイトで開催された「WOODコレクション2023(モクコレ)※注1」に流通業としてエイチ・ツー・オー リテーリング㈱様が出展され、小売りに何が出来るかというテーマで「アルヴェリ」の服を取り上げていただいたのですが、ブランドのコンセプトに共感して先方からアプローチして頂いたことに感激しました。開催期間中は今まで全く関わりのなかった多くの業界、業種、全国の自治体の方々との出会いがあり、今までのインポートファッションビジネスでは全く関わりの無かった方たちとの出会いにワクワクするとともに、SDGsは様々なところと繋がっていて互いに関係しあっている事を改めて感じました。

今までと全く違う動きをしているので、今後どのような展開になるか楽しみです。色々な方との出会いを今の仕事にも活かしていけたらと思います。

※注1:日本各地と東京都が連携した国産木材製品の展示商談会で、BtoBとBtoCを包括した総合展として開催。木材の大消費地である東京において、全国の地域材の利用拡大および消費者の意識強化を図ることを主目的としている。


■SDGsアクションの推進について課題と感じていることはありますか?

今のところは生産量も少ないためコストが高くついています。無駄に大量生産するつもりはありませんが、次世代のエネルギー溢れる若い人が買いやすい価格設定にするために、生産量や適正な原価率の設定に苦心しています。木糸を扱うメンバーで構成される「木糸コンソーシアム」に入れていただいて、受注生産するような仕組みが出来れば良いのではと考えています。

SDGsを進めるには時間とコストが掛かりますが、今はまだなかなか理解されない部分もあるので、社内の人たちのSDGsに関する意識が高まるように働きかけていき、また消費者に対しても参加者意識を持ってもらえるような、そのあたりも解決しながら賛同者の裾野を広げていきたいと思います。

未来のより良い環境のために世界中が取り組む循環型社会の実現に参加することで、弊社も持続可能な企業として成長が図れると思っています。


■SDGsの推進に際し、関西ファッション連合に期待することはありますか?

関西ファッション連合からご案内いただいたイベントでの出会いが今回のプロジェクトのきっかけにもなったので、これからも様々な情報を得られる場を提供いただけると嬉しいです。 同じ目的を持った仲間同士がフリーで話せる交流の場を頻繁に開催していただければ、もっと活動の場が広がるように思うのでぜひよろしくお願いします。


■取材者あとがき
三喜商事さんと言えばファッショナブルなインポートブランドを扱われている輸入商社で、ヨーロッパの様々なブランドを日本に紹介して育てていかれるイメージでしたが、今回の「アルヴェリ」は全く違ったアプローチで、SDGsを意識した自社オリジナルブランドの開発と聞いて驚きました。チーム「アルヴェリ」の皆さんは、日頃それぞれ違った部署で業務をされていて、新規プロジェクトを進めるには色々とご苦労があったと思いますが、お話を伺ってすぐにチームワークの良さが分かりました。何より明るく情熱をもって新ブランドの今後の成長を語られる姿には、やはり三喜商事さんらしい「ブランド愛」のDNAを感じました。 世界中で環境への意識が高まるなか、真っすぐにSDGsを謳うブランドの登場に、日本から世界へと今後のビジネスの広がりと成長を期待しています。 お忙しい中、取材協力ありがとうございました。