■会社概要
商号  株式会社プルテル
代表  代表取締役 田崎正明
設立  1975年(香港法人1982年)
従業員数 8名(日本6名、香港1名、上海1名)
事業内容 婦人服のOEM事業(企画、製造、卸)

■取材日:2020年11月13日

イタリアメーカーのカタログをきっかけにSDGsを発信開始


高品質なイタリア製の素材や独自のルートで調達するカシミヤ素材を使い、付加価値の高い婦人向けセーターのOEM事業を展開する株式会社プルテルさま。その取り組みについて代表取締役の田崎正明さまとマネージャーの蔡正芳さまにお話を伺いました。

■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
2017年頃からイタリア製素材の取り扱いが増え、その中で、環境に優しい素材をお客さまにアピールしてきました。2019年になりイタリアのゼニア・バルファ-社のカタログの中にSDGsの17テーマが掲載されており、初めてその存在を知りました。さっそく自分たちでもその内容を調べることで、環境に優しい素材を取り扱うことがSDGsの活動に繋がることを理解しました。そこで自社でもお客さまにSDGsの17テーマを提案する資料を作成し活用するようになりました。

■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
環境に優しい素材を提案する中で、お客さまは「エコ商品」とは新品でなく再生品であり安いものという認識があり、なかなか本来の意味をご理解いただくことができませんでした。そこで先ずはサンプルを作って展示会へ出すことで販売に繋げていこうと考えました。そのことにより環境に優しい商品に興味をもつ小売店から注文をいただけることを想定しています。
このような取り組みの中で、年々素材メーカーからのアイテム数も増え、徐々に理解が進んできたように思います。イタリアでは当たり前のSDGsへの認識も、まだまだ日本では浸透していないという印象を持っています。

17テーマが掲載されたゼニア・バルファ-社のカタログ

またカシミヤについては、その混率が課題となりますので当社ではその生産工程を細かくチェックしています。具体的には内モンゴルに足を運び、ヤギを選ぶ工程から指示を出し、毛の長さや、色、品質について厳格なチェックをしながら100%カシミヤ素材を提供しています。中でもSDGsの観点ではナチュラルカラーカシミヤの取り扱いを増やすようにしています。このカシミヤは染めることで色を揃えるのではなく、淡色から濃色まで色々な色調の毛を人の手で分けて、集めることにより初めて製品となります。手間はものすごくかかりますが、染色工程がありませんので、環境に優しい素材として評価が高まってきています。

■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
やはり経済が回ることで環境に繋がっていくと考えています。環境に優しいエコ商品は新しい取り組みになりますので、アパレルメーカーさんがある程度、余裕がある中で初めて取り組みが動き出します。エコ、エコと叫ぶだけで製品が売れる訳ではありませんので、そこはデザイナーさんの企画力にも大いに期待しています。

身近な世間の動向からエコへの取り組みを提案


■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
マネージャーの蔡が商品企画を行ないお客さまに提案するようにしています。お客さまとお話する際もいきなり自社の素材を提案するのではなく、例えば、お客さまが使っているiPhoneや近くにあるスターバックスが再生素材を使用するなど世間の話題から入ることで、自社製品にも関心を持っていただけるようにアプローチしています。具体的には展示会において最低でも5型以上のサンプルを展示いただき、小売店からの注文に繋がるよう一緒に取り組むことをご提案しています。

アパレルメーカーへの提案パネル

■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
イタリアでは当たり前の取り組みになっているSDGsについて、先ずは興味を持っていただけるように資料を作ってお話するようにしています。また、ゼニア・バルファーやアカデミアの環境素材を採用いただいた場合は、商品にラベルを付けていただくことも出来ますので、その点も合わせて訴求しています。

商品に付けられた素材メーカーのラベル

■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
この業界は1社でヒットが出れば各社が追随してくれるという認識があります。そのような意味では来年の展示会をきっかけに小売店からの注文が入り、商品が売れ出すことで一気に市場が拡がっていくと考えています。但し、そのためにはエコ素材を全面に出すのではなく、商品を見てかわいい!着てみたい!と思ってもらえるようなデザインの力が不可欠です。既に数社から展示会への出展について商談が進んでおりますが、提案については会社として企業イメージやブランドイメージに繋がる取り組みであることを理解いただくため、出来るだけトップとの商談も心がけています。

取り扱い素材の30%はSDGsにつながるものに


■2030年に向けて今後目指すべきものは?
まだまだSDGsの17テーマを知らない人が多いように感じています。先ずは知っていただくことで17項目の中から自分たちが出来ることが必ずあると確信しています。中でも若い世代の皆さんはグローバルな視点を持つ方も多く、SDGsについても強い関心を持っておられます。今後は我々が扱う素材の中で20~30%程度をエコ素材に置き換えていきたいと考えています。

■これから関西ファッション連合に期待することは?
SDGsの17テーマが一覧できるツールを作成いただきたいと思っています。その際はネットでの情報提供だけでなく、手にとって一覧できるツールが良いと思っています。また各社の取り組みを業界紙に掲載できるような広報活動もお願いします。やはり情報は目で見て確認して、理解することが大切です。沢山の人の目に触れる機会を増やす取り組みに期待しています。

■取材者あとがき
取材の中で何度も「当たり前」という言葉が出てきました。イタリアでは当たり前のSDGsを日本でも当たり前の活動に繋げるため、素材の立場から今できることに全力で取り組まれる姿勢が印象に残りました。来年の展示会を起点に一気に市場が拡がることを楽しみにしています。取材協力ありがとうございました。