■会社概要
商号  住商モンブラン株式会社
代表  代表取締役社長 石川士郎
設立  1950年(昭和25年)6月
従業員数 146名(2020年5月実績)
事業内容 白衣(医療・食品用)、サービスユニフォームをはじめ、作業服等、二次製品及び各種織・編物素材の企画、生産、販売

取材日:2020年8月17日

素材メーカーと協力し商品企画の視点からお客様に喜ばれるSDGsを実践


■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
SDGsというテーマを掲げたのは2019年初の展示会からとなりますが、エコという観点ではすでに25年の実績があります。当社の株主は住友商事㈱様の他にも東洋紡STC㈱様があり、1995年に東洋紡グループが再生PET素材の取り組みを始めたことをきっかけに、当社でも再生素材を使ったユニフォームを展開しました。そこから環境対応に注力しています。ユニフォームは耐久性や機能性など、お客様の要望をひとつひとつ具現化することでこれまで事業を行っております。当初、価格差のあった再生素材はお客様の要望に応えるべく、素材メーカーと共に努力し通常品との価格差を無くして普及に取り組んできました。

■17のテーマの内、どのテーマに取り組んでいますか?
主には素材メーカーと共同で環境配慮型のユニフォーム素材をお客様に提案しており、その他にもカーボンオフセットや回収・リサイクルに関連した活動もおこなっています。

①環境配慮型素材オニベジ
小松マテーレ㈱様の染色技術から生まれたもので、合成繊維を天然素材で染めることができるのが特徴です。タマネギの皮、ワイン+ぶどうの絞り殻、竹炭、オリーブの葉+絞り殻、インディゴ、米のもみ殻など、従来は廃棄されていた素材を活用することで、自然と人に優しい色を表現しており、オーガニックレストランや美容、介護などの分野で活用いただいています。

環境配慮型素材
オニベジ商品コレクション

②PETボトル再生繊維
技術革新もあり、100%リサイクル原料でもバージン・ポリエステルと同等の品質を提供することが可能となり、さらに生地種類や用途が広がっております。

③カーボンオフセット
京都議定書などで注目された温室効果ガス削減活動を促進する取り組みとして、当社が担っている材料調達から製品製造・輸送など一連の工程で排出される二酸化炭素の量を計測し、1着当たり2kgと算出。自分たちが排出する二酸化炭素の総量に対してオフセットする仕組みを活用し、CO2の削減に取り組んでいます。

④広域認定制度
大切に長く着ていただいたユニフォームを適切に回収し、有効なリサイクルに繋げることができるよう、指定回収期間や指定リサイクル工場を持つことにより販売店、お客様と力を合わせて取り組みができる体制を整えています。

⑤キッズユニフォーム活動
お子様を対象に食育、医療、介護などのイベントをする際のキッズユニフォームを提供しています。子供達がユニフォームを着る体験を通じて将来、「コックさん」や「看護師さん」になりたいという夢を持ってくれることを願っており、その子供達が働く服を作ることが、私たちの仕事です。

⑥FSC認証紙、ベジタブルインク、グリーンパワー
当社では営業ツールとして数多くのカタログを発行しているため、その工程において使われるエネルギー、用紙、インクなどにも環境配慮をおこなっています。

職種ごとに製作されたカタログ

■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
大きなテーマは「社会をより良くすることができるユニフォーム」を作ることを目指しています。「あの制服を着て仕事をしてみたい!」と思われるユニフォームには、働く人のモチベーションを上げる力があり、またそのユニフォームを着ることで「今日もいい仕事をしよう」という意欲にも繋がっていると考えています。また、長く使える耐久性も兼ね備えているため、その観点では「環境」にも関わっています。

年1回の展示会では社員が学び直してお客様と共にSDGsを推進


■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
当社はメーカーですので、企画部門がSDGsの推進を担当しています。また、生地取引が祖業のため、社員は素材に対するこだわりを持っています。このようなバックグラウンドがありますので、環境配慮型素材オニベジやPETボトル再生繊維などユニフォーム素材からSDGsを推進していくことができることが、当社の強みなのです。

■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
先ずは、「社員ひとりひとりがきちんと理解した上で周りに伝えること」がポイントだと考えています。具体的には、年に一度開催している当社の展示会ではSDGsに関する情報を展示していますので、その機会に社員も勉強し直し、お客様に説明できるレベルまで理解するよう取り組んでいます。展示会は東京と大阪の2カ所で開催していますが、来場されるお客様からは、「我が社に説明に来てほしい」という依頼もいただき対応しています。このような活動は、全国へSDGsを広める活動にも繋がっていると考えています。

■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
SDGsはどこかの機関が認可や認定をするものではないので、自社で設定したテーマが「正しいのか?」「どうしたら良いのか?」と分かりにくい点があります。よってそれぞれの取り組みが、なぜこの項目に該当するのかをメンバーで考え議論して答えを導きだしています。SGDs17テーマに無理に当てはめるようなことはせずに、SDGsの取組と決めた活動については、「何故該当するのか?」をQ&Aに纏めています。素材メーカーが設定したSDGsの項目もそのまま転用するのではなく、自社で考えて設定し、素材メーカーへフィードバックしています。

リサイクル素材のユニフォームで働きがいも経済成長にも貢献を!


■2030年に向けて今後目指すべきものは?
最終的にはすべてリサイクル素材でまかなえるようになりたいと考えています。我々のビジネスは主に企業向けなので、環境素材や回収リサイクルの活動については理解いただきやすいと思っています。SDGsのテーマについては、そもそも17個すべて網羅することはできませんし、ユニフォームという商材では8番の「働きがいも経済成長も」というテーマが追求しやすいと思っています。ユニフォームをきっかけに働きがいを感じていただき、日々の仕事を通じて経済成長に繋がることを願っております。最近ではコロナの影響で衛生管理への関心が高まる中、医療分野や食品衛生のユニフォーム需要も増えてきており、ユニフォームを通じて幅広い業種の働きがいと経済成長に貢献していきたいですね。

本社内のショールーム風景

■これから関西ファッション連合に期待することは?
我々が取り組んでいる活動について、もっと出来ること、まだまだやらねばならないことがあるのではないかと考えていますので、幅広い分野でのSDGsへの取り組み内容が知りたいです。SDGsの活動には気付かないうちに該当していることもあり、中でも廃棄削減については、捨てる神あれば拾う神あり、というようにある場所で不要になったものが他の場所で活用できるということも沢山あると思います。当社の取り組みをさらに進化させるためにも、関西ファッション連合には幅広い情報提供に期待しています。

■取材者あとがき
ユニフォームメーカーとして商品企画の視点からSDGsに取り組む活動は、自社の営業活動に直結するだけでなく、ユニフォームを使用されるお客様企業の取り組みにおいても環境、社会に対応したアクションに繋がっています。また17あるテーマについては自分たちが説明できる番号だけを厳選して表記している姿勢もSDGsの活動を内外に広めるために大切なポイントになっていると感じました。ユニフォームから拡がるSDGsアクションのさらなる進化に期待しています。取材協力ありがとうございました。