■会社概要 商号 株式会社STX 代表 代表取締役社長執行役員 髙丸 雅弘 創業 1898年 従業員数 210名(2022年4月1日現在) 事業内容 繊維製品関連商品(衣料品、繊維原料等) ■取材日:2022年6月16
企業の社会的責任でもあるSDGsの流れにいち早く対応
繊維原料からアパレル用品、雑貨類にいたるまで幅広い商品を扱う繊維専門商社、株式会社STXさまの取組について、管理本部 総務部 総務人事課長の松尾周平さま、大阪営業本部 副本部長兼原料部長 櫻井繁広さま、大阪営業本部 大阪営業第一部長 岡戸康彦さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
当社ではプロジェクトチームのようなものは無く各課で各々が取組んでおり、会議などでお互いの活動内容を共有しながら進めています。
まず人事総務部門では、これがきっかけといった明確なものはないのですが、当社は女性社員が多く社員の約6割が女性ということもあり、以前から活躍し、管理職になる社員もいます。もちろん産休や育休など働き易い環境の整備は以前から行っており、ジェンダー平等の取組に貢献しています。
原材料部門では8年程前ヨーロッパの有名アパレル向けの原材料供給に携わったビジネスがきっかけになりました。SDGsに関わる取組は欧州の方が早く、BCI(綿花持続可能性プログラム)認証を受けた綿花でなければ取引が出来なかった為、日本の商社として初めてBCIに参加することになりました。
アパレル向けの部門では、まず「エコテックス®スタンダード100」認証取得のドレスシャツからスタートしました。2012年に「特定芳香族アミンを生成するアゾ染料」を含む家庭用品の販売規制が始まることを知り、アゾ染料について調べる過程でエコテックス認証を取得することで課題がクリア出来ることがわかりました。また当時、欧米向けの取引が多いバングラデシュで様々な工場を訪問する中、外装ケースにエコテックス認証の表示を多く目にし、エコテックス認証に興味を持ったことがきっかけです。2015年9月に国連サミットでSDGsが採択されました。当社では2016年の春にエコテックス認証のドレスシャツの企画が始まり、2017年にはエコテックス認証商品が出来る、これは良いタイミングでSDGsに絡めた取組になると考えスタートしました。
サスティナブルな未来を広げる国際認証を取得することで世界トップレベルの安心・安全の証を実現
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
管理部門では細かい事になりますが紙の使用量の削減やLEDへの変更などを全社に通達し意識付けを行っています。眼に見える成果として共有できない事が課題ですが、意識は変わってきていると感じています。
原材料部門ではBCIに参加したことをきっかけに「U.S.コットン・トラスト・プロトコル」にも参加。GRSにも再度加入を予定しています。このようなプログラムに参加しそれに準じた原料を供給していくと共に、取引先など皆さんにその取り組みの紹介を積極的に行っています。また、親会社である蝶理株式会社が取り組む「ECO BLUE(エコブルー)」では共同ワークを進め、漁網ナイロンの再生にも着手するなど、様々な取引先さまと幅広く取組を推進しています。インドでは風量発電のみで稼働している紡績工場の製品を大量に仕入れており、また 一方では風力発電に使われる資材の供給を行っており、クリーンエネルギーにも貢献できているのではないでしょうか。
アパレル向けの提案商品では「エコテックス®スタンダード100」認証を取る事は安心安全の証明になります。企画当時は2020年の東京オリンピックの開催も決まっており、日本語の解らないインバウンドのお客様に向けてエコテックス認証の商品でアピールできると考え、2017年に発売を開始しました。さらに製造工場での「STeP」を取得し、エコテックス認証の最高峰、素材から生産背景、製品まで信頼性を確認できる繊維のトレーサビリティ証明「エコテックス®MADE IN GREEN」を取得した商品も提案しています。エコテックス認証を通じて多くのSDGsに繋がっています。
2021年にはダウンに代わる商品として「POWDERBALL™」を開発しました。ダウンと同等の暖かさで取扱いも簡単、生物由来の原料は使用せず環境保全を推進していく為に最新技術によって独自開発をした素材です。SDGsの9番「産業と技術革新の基盤をつくろう」12番「つくる責任つかう責任」に繋がる取組です。商品のパッケージに使う紙も本来なら捨てられてしまう米糠を生成する特許技術を用いてつくられている「FSC」マークの付いたものを使用しています。
■現在の取り組みは17テーマの内、どの番号に該当しますか?
価格競争ではない価値観を提案 SDGsの推進を取引先さまと共に
■SDGsへの取組みにより、どのような変化がありましたか?
昔にくらべて環境に配慮した商品への問合せは増えてきたという実感はありますが、まだそれが中心にはなっていない状況です。SDGsに関わる商品については価格競争ではない新しい価値観、差別化というところでお客様に提案をしており、プラスアルファーに働いています。
また、一方で来年の新卒採用には環境に配慮した取組に反響がありました。今の学生は非常に意識が高く環境問題について良く勉強をされています。繊維産業の課題を理解したうえで原料を扱う当社を希望された方がいて大変驚きました。人材採用の際には企業として環境に配慮した取組を推進する事は必要なものになってきていると感じました。
■SDGsアクションの推進について課題と感じていることはありますか?
環境に配慮した商品に興味をもつ取引先さまは確実に増えています。企業としてやらざるを得ない状況になってきていると思います。一方で残念ながら一般ユーザーにはそこまで響かないことが課題です。日本でのSDGsの認識はレジ袋の有料化、素材の変更で広まりましたが、実際にSDGsの17の項目を知っている方がどれくらいいるのか疑問です。
ビジネスの上ではもちろんコストの問題が一番大きいです。また既存商品の素材を環境に配慮したものに変更しようとすると、場所によっては作る事が出来ず、生産拠点の変更が必要になることもあります。また原料が異なると風合いが変わり商品が変わってしまう、このような事もハードルになっています。
■SDGsの推進に際し、関西ファッション連合に期待することはありますか?
各社が独自性をだして取組んでいますので連携して推進するということはなかなか難しいと思いますが、価値に共感できる仲間を増やしながら一緒に出来る事があれば取り組んで行きたいと考えています。KanFAには各企業さまの情報を収集、発信していただき、繋がる場になっていただきたいと思います。
■取材者あとがき
安心・安全な商品を提供し、その情報をどのように伝えるかを検討される中で参加された様々なプログラムや国際認証の取得がSDGsの推進に繋がっていることを知る良い機会になりました。よりハードルの高い認証を取得され、SDGsに貢献する新しい素材を開発されるなど、進化をされるSTXさまの取組に今後も注目し、繊維業界の取組が一般ユーザーにも認知され、SDGsがスタンダードとして広がることに期待したいと思います。取材協力ありがとうございました。