■会社概要 商号 澤村株式会社 代表 代表取締役 春日 強 創業 1872年4月1日 設立 1925年8月25日 従業員数 101名(男性63名/女性38名 ※2021年9月30日現在) グループ総従業員数 173名(男性71名/女性102名 ※2021年9月30日現在) 事業内容 繊維専門商社(繊維製品の企画製造販売事業) ■取材日:2022年7月15日
「スリーハートの精神」で得意先・仕入先・澤村が一体となって共存共栄を
繊維専門商社として今年創業150年を迎えられる澤村株式会社さまの取組みについて、執行役員営業副本部長の田中一志さま、管理部部長の奥野純永さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
SDGsについてはこの2~3年良く聞くようになりましたが、弊社が環境問題に取り組んだのは2003年頃からで、当時の社長の発案がきっかけでスタートしました。京都で開催されたCOP3(第3回気候変動枠組条約締結国会議)で採択された「京都議定書」の流れや社会情勢などを検討したうえで、今後永続的に経営を続けるにあたり弊社が取組むべき重要課題として地球環境の保全を戦略項目に加えました。
それに伴って2004年にKES(京都・環境マネジメントシステム・スタンダード)の認証を取得し、企業として環境宣言を行って、本格的に環境マネジメント活動をスタートさせました。この認証制度は企業が自ら環境改善目標を定め、毎年7月に達成内容の審査を受けて更新するもので、現在も継続して取り組んでいます。
また一方で、このような取組みへの有無が現実のビジネスに影響してくることも事実です。その後売り場や取引先からの要望もありテキスタイルで「エコテックス®スタンダード100」の認証も取得しました。弊社はメーカーではないので単独では何も出来ません。弊社の企業理念である「スリーハートの精神」(得意先・仕入先・澤村の三者が一体となり、三つの心をもって共存共栄する。)を実践する中で、互いに協力し合いビジネスを通して環境課題の解決に取組んでいます。
オリジナルロゴマーク「Life with Sustainable」の利用拡大へ
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
➀ムダ使いしません
➁資源を大切に使います
③不要なものは作りません
の3項目を掲げて、環境に優しい素材の開発、ペーパーレスの促進、古紙の再利用、水資源の節約、エネルギー(電気・ガス)の使用量削減、リサイクル商品の活用といった取り組みを徹底しています。大手の得意先とは共同で、製品のリサイクル原料への置き換えを進めていますが、弊社が主導して出来る部分でもバージン原料からリサイクル原料への置き換えやバイオ原料を使った副資材の使用、オーガニックコットンや水の消費量を大幅に減らせる原着糸の使用等を進めています。
また今年、サステナブル素材を使って作られた製品につける弊社オリジナルのロゴマークとして「Life with Sustainable」を商標登録しました。
「社員の成長は会社の成長」社員一人一人が働きがいを
女性のボディファッションを扱う澤村グループでは、縫製工場から店頭販売まで多くの女性が働いているため、第三者機関のチェックも受けながら女性の活躍の場を整備し、ストレスフリーチェックも行い働きやすい環境づくりを行っています。また、「社員の成長は会社の成長」との認識のもと、社員から仕事に役立つ勉強や資格取得などの申請があれば補助をする制度を整えており、特にTES(繊維製品品質管理士)や女性の下着アドバイザーの資格IA(インティメイトアドバイザー)の取得には全額補助をしています。他にも繊維の知識や各種法規の勉強、英会話などにも利用されており、この制度を利用して、学んだことを仕事や生活に活かし、社員一人一人が働きがいをもって「顧客満足度」と「自己満足度」を共に高めていきたいと考えています。
対外的な活動として、国内での災害時には衣料品(肌着)の支援物資を地方自治体へ寄付したり、また海外の貧困地域や自然災害を受けた人々、紛争での避難民などへは「日本救援衣料センター」を通して長年にわたり衣料品の寄贈活動を続けています。
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
基本的に管理部が管轄していますが、グリーン調達や資源のムダ使いなどには経営室が力を入れており互いに連携して推進しています。
SDGsへの取組みで部門間の交流が活発になり全社の連携が深まった
■SDGsへの取組みにより、どのような変化がありましたか?
以前からずっと取り組んでいる事の延長に、後からSDGsがやってきた感覚なので、改めてSDGsへの取組みで取引に変化があるかは分かりませんが、社内的には大きな変化がありました。
東京ビックサイトで開催されたサステナブルファッション展に二回連続出展したのですが、他社の取組み内容にも刺激を受けたこともあって社員の意識が高くなり、SDGs関連の商品を販売することに積極的になってきました。一回目はインナー事業部だけでしたが、二回目は営業本部全体で出ることにしたので、出展準備段階から事業部間の交流が進み、全社で横の連携がより深まりました。特に若い社員にとっては、今まで知らなかった他の事業部が扱うサステナブル商材の情報を共有したことで、会社全体の動きを理解する事にも繋がりました。
社外への発信強化の一環で、ホームページを刷新して「環境問題への取組み」を大きく取り上げました。最近はホームページを見た就活の学生からの問合せも増えています。また、社内のグループウエアでSDGs関連の新着情報を常にアップして、社員全員で共有するようにしていますが、今のところ社内外へのアピールがまだまだ足らない状況です。
■SDGsアクションの推進について課題と感じていることはありますか?
やはり商売では値段が重要で、お客様からはリサイクル糸でも同値段でとの要求があり、結果的にコスト高が問題で取り上げてもらえない事も多々あります。色々なお客様がいるので中々難しいですが、現場の営業には多少利益が少なくても将来のためにひるまず取り組むように指導しています。今後は値段の問題も少しずつ解消していき、同時にもっと消費者や社会の中でSDGsへの機運が高まれば取引先の意識も変わっていくと思います。諦めることなく辛抱強く取り組んでいけば、いずれ必ず成果が出ると考えています。
■SDGsの推進に際し、関西ファッション連合に期待することはありますか?
先ずは繊維業界の色々な新しい情報を発信してもらいたい。普段はどうしても弊社の取引先や仕入先と取引上の範囲内で話すことが多いため、深く突っ込んだ話をすることがあまりありません。そういった面で業界内の新しい出来事や日々更新される情報が貰えるとありがたい。また、SDGs関連も含め業界内外とのビジネスマッチングや、全体的に商売が広がるような情報の提供にも期待したい。
■取材者あとがき
SDGsが採択された2015年よりずっと以前から地球の環境問題に取り組まれていて、会社の「環境宣言」として基本理念・方針を具体的に示されていることで、地球環境の保全に対する思いに説得力がありました。また、社員の自己啓発を積極的に支援し、働きがいのある環境づくりに努めるというお話が印象的で、人を大切にする社風が社員に浸透して、「スリーハートの精神」の実践や地球環境を大切にする行動に繋がっているのだと思いました。取材協力ありがとうございました。