■会社概要
商号  株式会社 ヤギ
代表  代表取締役社長 八木隆夫
創業  1893年10月
設立  1918年4月
従業員数 659名(連結、2020年3月末現在)
事業内容 繊維専門商社
取扱商品 綿・合繊糸等繊維原料、ニット・テキスタイル、メンズ・レディスアパレル、スポーツウエア、ナイティ・インナーウエア、寝装品・インテリア商品、生活関連および産業繊維資材

■取材日:2020年9月28日

独自のコンセプト「ヤギシカル」を制定しパートナーシップを目指します!


繊維商社として127年の歴史を誇る株式会社ヤギさまの取り組みについて経営企画本部グループ経営企画部課長であり、エシカル推進グループのリーダーである菅原勇一さまと同グループのメンバーである向井瑞貴さま、大久保英太さまにお話を伺いました。

■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
当社ではSDGsのテーマが制定されるずっと前からオーガニックコットンやリサイクルコットンの取り扱いを営業レベルでは行なっていたのですが、それらの取り組みを全社的なものにするため、2017年12月に先ず非公式なカタチでエシカル委員会を立ち上げました。ここで各部署から集まったメンバーが、会社として何ができるかという観点で何度も議論を重ね、2019年に取り組みテーマとなる「ヤギシカル」を制定しました。繊維商社であるヤギだからこそ出来るエシカル活動に、独自の名前を付け、ロゴを作り、我々が目指す方向性を明らかにすることができました。
また2020年4月からは、中期経営計画の重点項目のひとつとして「サスティナビリティの着実な実行」を掲げ、エシカル推進グループが正式に発足。この活動を普及させること、継続させること、そして事業と両立させることを目指しています。

■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
先ずは元々行なっていた活動を17のテーマに当てはめることから始めました。具体的には縫製工場で廃棄されるはずの生地(コットン)の切れ端を回収し、色ごとに分類して糸を再生する「リサイクルコットン」の取り組み。インドの農家と連携し、3年以上農薬や化学肥料を使用せずに綿花を栽培する「オーガニックコットン」。さらにインド産のオーガニックコットンを使用した製品に基金を付けて販売し、その基金を活用して農家の支援や、農家の子ども達の就学・奨学を支援する「PEACE BY PEACECOTTON」の活動にも参加しています。
その他にも普段の生活の中でエシカルな選択が拡がるようエシカルテキスタイルブランド「FORETHICA(フォレシカ)」の展開。廃品となった羽毛を回収し丁寧に洗浄することで高品質な羽毛に蘇生させる「サイクルダウン」の取り組み。愛着あるモノを修理しながら長く使い続ける時代を見据えて、アパレル商品やファッション雑貨の補修、クリーニングを行なう「REPRO-PARK(リプロパーク)」の設立などにも取り組んでいます。これらの活動の推進を通じて一番重要だと感じたことは、17番の「パートナーシップで目標を達成しよう」というテーマです。
というのも我々は商社ですので我々だけで解決できる課題は限られています。しかし数千社に及ぶコネクションという強みを活かすこと、具体的には仕入れ先様、生産地の工場、販売先様、さらには消費者も含めてパートナーシップで課題解決に取り組むことでより大きな課題解決ができるのではないかと考えました。その為には我々のエシカル活動である「ヤギシカル」を一人でも多くの方に知っていただき、同じ輪に入っていただくことが大きな使命であると認識しています。

FORETHICA(フォレシカ)の生地見本

■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
環境、社会、経済の中で特にこれが中心と決めているものはありません。昨今注目されているESGという概念ではどれも大切であると理解しています。とはいえ環境に配慮すればコストアップに繋がったり、経済重視で行けば環境負荷が増したりと、両立させることはなかなか難しいとも感じています。よって我々一社だけで両立を目指すのでなく、素材メーカー、生産工場、アパレル、小売り企業などとも協力を得ながら成し遂げて行きたいと思います。「続けよう、未来のために。」をスローガンに皆さんと共に環境、社会、経済のバランスの取れた両立を目指して参ります。

社員向けのホームページを開設し最新情報はメルマガでも配信中


■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
我々エシカル推進グループのメンバーは大阪に3名、東京に3名の6名で構成されています。メンバーは総務、開発、営業など各部署から集まっており、月に1回の定例ミーティングで活動のアイデアを出し合ったり、各部署の取り組み内容を共有したりしながら「ヤギシカル」の推進に取り組んでいます。商社という組織は意外と別部署の業務を知らなかったりするので、横断的なグループ構成により、全社での情報共有にも繋がっています。

■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
先ずは社内浸透のために社員向けのホームページを立ち上げており、サスティナブルに関わるニュースを掲載し、その内容をメルマガでも配信しています。合わせて社内で「ヤギシカル」に携わっている人にインタビューも実施しています。また「ヤギシカル」の活動をより多くの人に知ってもらうために、マスクの配付も行なっています。これは洗って繰り返し使える機能素材マスクになっていますので、マスクを通じてサスティナブルを感じていただく効果も狙っています。

ヤギシカルをPRする機能素材マスク

また社外に向けては中高生主体で構成される「ありがとうと、笑顔が生まれる服づくりを世界中に浸透させること」を最大目的としたプロジェクト「やさしいせいふく」のパートナー企業に採用されました。他にも社会課題に取り組みファッションブランド「coxco(ココ)」と業務提携し、倉庫に眠る生地から新たな価値を持つ洋服を生み出すプロジェクトもスタートさせました。若い世代の皆さんはエシカルの意識も高くSNSを使った発信力もありますので、これらの取り組みは未来を見越したマーケティング活動に繋がっていくことをイメージしています。

■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
我々のメインのお客さま層である専門店さんの関心がまだ薄いように感じています。個人店の場合は比較的従業員も少なく、自分の店舗運営だけでも仕入れ、陳列、接客、販売など一日中忙しくされていることが多いです。その上に、SDGsの理念をお伝えして共にアクションしていただくには、我々の啓蒙活動がまだまだ必要であると実感しています。

「商事」という名のもとグローバルに自由に発想します!


■2030年に向けて今後目指すべきものは?
これまで繊維業界に127年携わってきましたので、先ずはこの業界を良い業界にしていきたいと思っています。例えば、生産地の労働問題、国内では産地の疲弊、過剰在庫の問題、環境負荷など様々な問題がありますが、全部SDGsの17のテーマに当てはまると考えています。つまりは繊維産業そのものがサスティナブルな業界になっていく必要があると思います。2030年に向けて我々だけで出来ることは少ないですが、糸、生地、製品など色々なところでパートナーシップを発揮しながら関わっていけるとイメージしています。そのためには社内の意識も高まり、エシカル推進グループがなくても当たり前の行動として標準化できることが理想です。特に若い世代がわくわく感をもって働ける会社を目指していきたいと思います。

■これから関西ファッション連合に期待することは?
パートナーシップに向けて組合員企業同士が共に取り組めるようなネットワークを拡げていただきたいと思います。先ずは情報交換などから始めていただければ、似たような取り組みを一社ではなく、共に取り組めれば、より大きな成果に繋がるものと考えています。また我々の取り組みはまだまだ発展途上でありますので、このように取材、紹介いただくことで他社の取り組み内容をお互いに参考に出来ることは有り難いです。「ヤギシカル」をコンセプトに、沢山の人と繋がりを生み出していただけることに期待しています。

■取材者あとがき
2017年からエシカル委員会を立ち上げ、自分たちに出来ることはなにかと議論を重ねて「ヤギシカル」という独自のコンセプトを設定されました。同社の社是にある「終始一誠意」がSDGsの活動にも繋がっており、強い信念と今後の拡がりの可能性を感じました。またエシカルの意識が高く発信力を持つ若者に向けた取り組みは、まさに未来のマーケティング活動であると感心しました。取材協力ありがとうございました。