■会社概要
商号  株式会社アイソトープ
代表  取締役社長 林 直行
設立  2000年
従業員数 42名 ※2022年2月現在
事業内容 ニット製品企画製造販売、各種原糸販売、産業資材加工

■取材日:2022年 2月 8日

アパレル製品にFSC認証マークを表示できるのは当社が世界初


国産ニットウェアの企画製造販売されている株式会社アイソトープさまの取組みについて、創業者の金沢克哉さまにお話を伺いました。

■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
約15年前、まだサスティナブルな意識が無かった頃に和紙糸製造のノウハウを持つ工場と出会い、当時あまりメジャーでなかった和紙糸を綿に代わる素材に育て上げることで一致し、2社で素材開発と商品拡販を進めてきました。和紙糸は以前からありましたが高額なのと、太く硬いため産業資材の用途にしか使用できず、アパレルには不向きでした。しかしこの工場が開発する和紙糸は細く、アパレル用途にも使用することができました。また、和紙糸は日本独自の素材で、コスト的にも技術的にも優位性があると言うこと、繊維不況で新たな素材が開発されない中、新規性があるということもあり、和紙糸に着手しました。
和紙糸の原材料は針葉樹のため植物由来であり、調べてみると50年にわたり温室効果ガスを吸収し続けるということが分かりました。結局のところ、温室効果ガスを吸収するのは木しかありません。また、木を燃やした時には二酸化炭素を排出しますが、それまでに吸収していた二酸化炭素の量以上には排出しないので、まさにカーボンニュートラルです。
それと、和紙糸の製造量が、事業を始めた15年前は年間1トンでしたが、現在は100トンを超え、温室効果ガスの吸収量もある一定の量になりつつあるのと、環境への取り組みを重視できなければ大手企業との取引が難しく、企業価値向上面もあり、本格的に和紙糸を使ったSDGsに取り組むようになりました。
木は二酸化炭素を削減できます。その他は必ず二酸化炭素を排出してしまいます。リサイクルをするにもエネルギーは必要です。作り過ぎたものをどうするかではなく、ものづくりをしない事が一番のエコだと思います。でもそれでは社会として成立しない。必要な量だけ作るようにしないといけないと思います。

和紙糸を使用したアパレル製品

■具体的にはどのような取り組みを行っていますか?
和紙はマニラ麻やバナナなど様々な植物由来で出来ています。当初、針葉樹の他にマニラ麻を原料とした和紙糸も生産していましたが、フィリピンの麻農場では、コブラの生息している場所で子どもが裸足で労働させられているといった劣悪な労働環境や児童労働が、当たり前のように行われているのを目の当たりにしました。また、他の産業廃棄物の植物由来による原料であっても、労働としては劣悪な環境に変わりはなく、近代的に生産されている針葉樹だけを使用することにしました。針葉樹は長年にわたり成長段階で二酸化炭素を吸収し、大木は建築、未成長木は家具など、端材などの廃棄物はパルプの原材料になり、当社で使用している原料パルプは廃棄物ロスにもつながっています。しかし、針葉樹であっても植林をしない乱伐採があれば森は消滅し、温室効果ガスは減少しません。そこで当社は、森林や動物保護を目的とする国際的な認証である“FSC認証”を取得しました。
昔は一般的にSDGsの意識が無かったので、エコを標榜するために木を使うようになったため、木が伐採され天然林はどんどん無くなっていきました。それを危惧していた時にFSCという団体は伐採したら必ず植林するといった、木を無くさないことを活動目的の一つとしていることを知り、FSC認証を取得することを考えました。FSC認証を取得するためには製造工程はもちろん、労働環境やフェアトレードも確認の対象になります。FSC認証マークが付いている商品はエビデンスがあり、しっかり管理された環境で作られた商品という証明になります。持続可能で管理された森林資源を活用して和紙糸を製造し、それを使って商品にして販売していくことで、持続可能な“エコロジーとエコノミーの両立”を考えています。
それと、アパレル製品にFSC認証マークを表示できるのは当社が世界初だと思います。FSC認証をアパレルが取得する場合、紙、紡績、染色、編立、縫製、二次加工、検品等、サプライチェーンに掛かる全ての工場で取得しなくてはなりません。全ての工程で認証を取得しているのは当社だけですので、アパレル製品に認証マークを表示できるのは当社のみという仕組みです。FSC認証の表示はTシャツや靴下に考えていますが、ファッション要素が強くデザインが変わる衣類への表示はあまり考えていません。産業資材や制服を中心に検討しています。

FSC認証を取得した和紙糸
FSC認証証明書

■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
商圏と製品開発は相談役の金沢が、拡販は社長の林が、FSC事務局対応は総務経理が担当しています。

■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
FSC認証は従業員全員が意識を共有していないと運用できない仕組みになっています。従業員に対しても帳票の意味やロゴやラベルの使用方法、認証を取得する意義等についても確認をされますので、従業員には講習を受けてもらい理解してもらう必要があります。
また、認証商品が通常品に混入しないことや、どの針葉樹から製品ができ、どこに販売したか等、すべて管理する必要があります。逆に言えば、この製品はいつ、どこの森林で採れたどの木が原料という事が確認できなければなりません。認証商品はトレーサビリティーとエビデンスがとれますが、そのためにも会社全体で運用する必要が自動的に発生します。FSC認証を運用することで、会社と従業員は自動的にSDGs項目の多くに貢献していることになります。
従業員の意識として、元々ISO9001を取得しているのでFSC認証を取得する事に対してもハードルは高くなかったと思います。それと和紙糸は元々売上も大きかったこともあり、和紙糸でFSC認証を取得するという事なら更に利益に繋がる、ということで従業員も理解してくれました。

FSC認証が貢献できる目標

“当社はカーボンニュートラルです”を目指して


■SDGsアクションの推進について課題と感じていることはありますか?
あくまで私の考えです。

リユース(再利用):一番エコだが、経済は崩壊する
リデュース(削減):安価大量をやめられますか?
リサイクル(再生):素材減でも新品と再生の両方ができて量が増えている

エコロジーとエコノミーの両立は難しく、現在はエコノミー推進のためのエコロジー活動がメインになっている場合が多いと思います。また、SDGsバッチをつけている販売先もSDGsを口にする割に安価なものを要求しています。今のところアパレル業界のSDGsは販売につながる売り文句の域を超えていないのが現状です。
ただ、私も最初は3Rがいいと思っていましたが、リサイクルも二酸化炭素を排出してしまいますので違うと思いました。結局、エコロジーとエコノミーの両立は難しいです。

■2030年に向けて今後目指すべきものは?

1ステップ “この商品はカーボンオフです”
2ステップ “この商品はカーボンニュートラルです”
3ステップ “当社はカーボンニュートラルです”

の順序で考えています。
1については、この商品については木の時にこれだけの二酸化炭素を吸収していますと言えるので、すでに達成できています。
2についてはあと一息です。
3については当社の温室効果ガス排出のメインである電力を改善する必要があります。そのためには自家クリーンエネルギーの開発が必要になります。風力や太陽光発電、それと当社で扱っているのは針葉樹もしくは植物由来の素材ですので、繊維廃棄物を使用したバイオマス発電など現在実現可能かどうか模索中です。

併せて、商品を全て和紙製品に変えなくてはなりません。そこを目指したいのですが、そうなればセーターは作らずに産業資材だけになると思います。売れている間はセーターを作りますが、いずれ売れなくなり、セーターは無くなると思います。今後は和紙糸を使って無くならない商材を作りたいです。現在でもアパレル以外の業種とのやり取りが増えてきていて、どんどんお客様がアパレルではなくなってきています。

A.FSC認証の和紙糸製品を増やす(持続可能で他素材を使用するより温室効果ガスをより吸収)
B.社用車、運送、社内雑品などエコ商品に転換(温室効果ガスの削減)
C.クリーンエネルギーの自社導入など(一番の排出量をなくす)

Aから進めています。

■SDGsの推進に際し、関西ファッション連合に期待することはありますか?
海外で安価な商品を大量に仕入れる→在庫を残す→売値を安くするため、もっと大量に安く仕入れる→在庫を残す・・・・・、このサイクルを断ち切っていく活動をしてほしいです。要るものを要る分だけ国内で作り残さないクレバーさを啓蒙してください。そうすれば日本の繊維業は適正な売上、適正な仕入れ、適正な給与で適正に経営できるのではないでしょうか?バングラディシュやミャンマー、中国等で大量に製造して販売できるほど日本の市場は大きくないはずです。国内の消費はコロナの影響もありますが、そもそもしんどかった。そろそろそこに気付いて欲しいです。
以上、国産の工場を代表して言わせていただきました。

■取材者あとがき
15年程前のある出会いがきっかけとなり、カーボンニュートラルな資源である木をビジネスに活用され、商品だけではなく企業自体もカーボンニュートラルであるように目指して取り組んでおられる姿勢は、地球温暖化対策にダイレクトに貢献されていると実感しました。取材協力ありがとうございました。