■会社概要
商号  有限会社トレモア・プランニング
代表  代表取締役 山本 一彦
設立  2003年11月
従業員数 12名 ※2021年12月現在
事業内容 衣料品卸売及び商品企画
 
■取材日:2021年12月14日

ものづくりに「ファッション」を添加し、新しい価値を届ける


「社会で生活する人々、従業員とその家族、そして取引先に幸せを届ける」をフィロソフィーとして事業を推進されている有限会社トレモア・プランニングさまの取組みについて、代表取締役の山本一彦さま、デザイナーの上野欣也さまにお話を伺いました。

■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
弊社の得意先様より、全国にある店舗でその地域ごとのSDGs関連商品を取り扱いたいという意向から、パートナーシップを結べる地場産業の工場様の紹介依頼がありました。2019年頃、得意先様と共に地域の繊維製品の生産工場様を訪問したことがきっかけとなりました。
各工場様で生産される商品を見ていると天然素材や天然染料を使っているものが多く、海や陸に配慮したものづくりに触れる機会が多くなったことから意識するようになりました。それに工場様が発展し稼働され続けることが、新しい雇用の創出に繋がると思い、これが当社の考えるSDGsであると実感しました。それまではSDGsという名詞(単語)としてしか認識できていませんでしたが、自分が実際に動いてみたことで初めて動詞化(自分ごと)することができました。

■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
時代と共に生産地が海外に変わり、国内の工場様は減少の一途を辿ることとなりました。しかし、現在残っている工場様を色々と訪問させて頂く中で、奈良の蚊帳織物や、奄美大島の泥染め等々、陸に優しい天然素材や海に優しい染色技術など、伝統的な製法技術と商品を目の当たりにしました。資本力や価格力で流通に乗らず、市場に知られていない技術や商品が沢山埋もれている事を知りました。
世の中に知られていないSDGsのテーマに沿う商品や技術、継承する文化は多くあります。これらの商品や技術を弊社が結び役となり、お互いの工場様がパートナーとなって新たな商品を作り出すことで新しい価値が生まれ、それらの地場産業の次世代への継承が出来ると考えました。
各工場様とも事業を継続していきたいと考えておられますが、一社での活動だとかなり厳しく、廃業する工場様も増えていくと思います。こんな商品や技術があると提案することで、新しい商品が生まれ販路も広がります。事業も継続できる可能性があります。そういった事も常に意識しながら工場様を訪問させていただいております。
その考えのもと、共同企画での生産商品やオリジナル商品等を集めて、SDGsセレクトSHOPを心斎橋PARCOでポップアップ出店しました。今後、このポップアップSHOPを自社ショップとして展開していく予定です。そこに各産地の商品を出品いただくことで、サスティナブルショップという位置付けとして取り組んでいきたいと考えております。ECも立ち上げることで、より多くの産地の方とも一緒に取り組んでいただける可能性が広がるので、より深く検討したいと思います。

SDGsは最初から100%を目指すのは難しい


■現在の取り組みはどのテーマに該当しますか?

できれば17テーマ全てに取り組みたいと思いますが、出来る部分から取り組んでいきます。検討しているのが、障がい者支援施設で、就労されている方々向けの住居の提供等、障がい者の方への就労環境の支援で、「1 貧困をなくそう」にも繋がるのではと、関係各所とも検討を進めております。
また、染色せず素材本来の天然素材の蚊帳の生地を企画していますが、それを介護現場でも活用できる商品を生産することで、「3 全ての人に健康と福祉を」にも貢献できると考えています。

無染色素材を活用した製品

国産の商品は価格が高くなりますが、海外に無いような素晴らしい商品ばかり。そのPRのお手伝いに弊社が間に入り、各工場様の商品の紹介や他産地同士の工場様を、マッチングさせて新しい商品を企画し、得意先様の店頭で販売するという事を始めております。これは「17 パートナーシップで目標を達成しよう」に繋がっています。
自社でも何かに取り組まなければと考え、印刷会社様のご協力で実用新案を申請しながら、新しいパッケージ製品を作りました。表は従来通りのビニールですが、裏をビニールから紙に変えました。柄物の下着など、商品が見えるようにしたいが、半分をビニールから紙にすることで、半分がエコになりSDGsに繋がります。いきなり100%エコにすることは難しいですが、できる部分からエコに取り組む、まずはやってみる事が重要と考えました。少しずつでも世の中が変わるきっかけになればと思っています。

新パッケージ(ちょっとエコ)

■SDGsへの取り組みにより、どのような変化がありましたか?
SDGsの提案商品をクラウドファンディングでも出品しましたが、その拡がりにより、多くの地域の方々と、交流させて頂ける場が出来ました。また、様々な方面から、弊社がSDGsセレクトSHOPを始めたことで問い合わせを頂いております。セレクトSHOPは対外的な面だけではなく、従業員にもSDGsの意識を持ってもらいたいという気持ちもあり実施していますが、若い方々にも浸透するには、もう少し時間が必要かもしれません。
一方、得意先様に関してですが、ある得意先様は意識を強く持って、能動的に活動されています。それと各工場様も、かなり意識が高くなって来られていると感じております。

SDGsは「まずはやってみる」精神が重要


■SDGsアクションの推進について課題と感じていることはありますか?
SDGsのセミナーへの参加や取引先様からのSDGsのご商談も増えましたが、CSRとCSVの問題、SDGsを動詞で捉えられている企業が少ない事、若い方々をはじめとした社会の方々がSDGsを名詞としてしか捉えていない事、等々、SDGsの社会への浸透実践には、まだまだを感じております。
あと、SDGsは利他の精神が必要ですが、利他vs利益という天秤のつり合わせ方の難しさが課題と感じております。楽観的に捉えて「まずはやってみよう」とはなかなか思っていただけないのが現状です。

■SDGsの推進に際し、関西ファッション連合に期待することはありますか?
CLOUDYのように、営利とNPOを実践されたらワクワクします。SHOPではなくても構わないので、アドバルーンのようなKanFAとしてのメッセージや考え方を出していただけるといいのではないでしょうか。

■SDGsの推進に際し、関西ファッション連合に期待することはありますか?
産地の工場のものづくりを世の中に広め、それを軸に新しい価値を生み出し、持続可能であり続けるための取組みには感服しました。伝えるだけではなく自社も何か取り組まなければと実際に活動されているのは、正に動詞化のお手本だと思いました。今後の活動にも期待しております。取材協力ありがとうございました。