■会社概要 商号 株式会社ナカハシ 代表 代表取締役 中橋 晋作 創業 1967年7月1日 設立 1976年9月30日 従業員数 19名 ※2021年7月現在 事業内容 ハンドバッグ製造・卸、オリジナルバッグブランドの製造・販売 ■取材日:2021年8月4日
昔から教えられてきた「もったいない」が取り組むきっかけに
「自分にしかできない“ありそうでなかった”バッグを世に出そう」という思いで立ち上げ、ものづくりの殆どの工程を内製化しているブランド「kawa-kawa」を展開している株式会社ナカハシさまの取組みについて、代表取締役の中橋晋作さま、営業部部長の大田夕樹さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
2年ほど前からSDGsの流れを肌で感じるようになりましたが、当初はあまり実感もなく、いわゆる「エコロジー」的要素として認識しておりましたが、日々のニュースや日常からも「サスティナブル」の言葉や行動を垣間見る機会が増え、ビジネスにおいても大きな流れを感じるようになりました。
ただ、当時は自社がSDGsに貢献できるとは思っていなかったのですが、SDGsの認識や理解がないと市場から退場させられるのではないかという恐怖感はありました。そしてコロナ禍になり考える時間も増える中で「もったいない」という言葉が引っかかりました。子供の頃からもったいないという教育の中で育ったこともあり、そういった身近なことが取り組むきっかけになりました。
ヨーロッパのメゾンが毛皮や牛皮の不使用を打ち出してきています。主流にはならないにしても世の中の流れだと感じています。ただ当社は皮革製品が約80%を占めている、革で育ったような会社ですので、それを合成皮革等に置き換えるのは難しい。そんな中、できることを考えた時に、「もったいない」という言葉とおり、リユースやリサイクルに焦点を当てて取り組みを始めています。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
1年ほど前から「当社ができるSDGsとは?」を直視し、製造メーカーとしての武器を活かせるよう、2021年4月1日に新ブランド「kawa-Re(カワーレ)」を立ち上げました。kawa-Reではお客様から不要になった当社製品「オリジナルブランド:kawa-kawa(カワカワ)」を買取り、自社工場にて再生・修復作業を施し、生まれ変わった製品として再度、市場に流通させる仕組みを構築しました。
環境への取り組みは徐々に始めていけばいいと思っていましたが、始めてみるとお客様の反応が思っていた以上によく、お客様から「待ってました」と言われることも多々あり、我々よりも進んでおられる方も多いという事を感じる機会にもなりました。お客様から画像付きで使用後の感想や、プレゼントしたらすごく喜んでもらえた等のお声もたくさんいただけるのが非常に嬉しく、モチベーションアップに繋がっています。
我々は顧客が第一で、お客様が喜ばれることを常に考えてものづくりに取り組んでいます。その一環としてSDGsへの取り組みを行なっているという感覚です。当社では限りある資源の有効活用はもとより、お客様には商品を大切に使う意識を持っていただき、「循環」を目的としたものづくりを製造メーカーの責務として取り組み、「つくる責任、つかう責任」を果たしていきたいと考えています。
意識を持っていただくためにもSNSやホームページでお伝えしておりますが、より大切にしようと思っていただくために、お客様にはこんな場所でこんな人がこういった商品を作っているということを全て見ていただけるよう、取り組んでいきたいと考えております。
どう再生すればお客様が喜んでいただけるか、業務の中で感覚を養っていく
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
デザイナー(社長)が主だって発信・推進しています。当社ではSDGs活動に特化した部署はなく、社全体で取り組んでいく仕組みを構築していて、企画部、生産部、営業部がそれぞれの役割を担いながら、日々の業務がSDGs活動に繋がるよう意識しています。活動の発信はSNSを活用したり、雑誌で取り上げられた等の活動をホームページでしっかりと説明するようにしています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
社内の従業員に対しては、実際に業務として再生・修復作業に関わり、限りある資源の有効活用を実感してもらっています。当社の従業員は全員、修復・再生業務が出来るように、自分で一つの商品を作り上げることに取り組んでもらっています。そうすることで、オールマイティな人材が育ちますし、お客様から買い取った商品をどうやって再生すれば需要が生まれるのか、ここもったいないよね、これまだ使えるよね、といった感覚を日常の業務の中で養っています。
自分たちで工夫して作って売って、お客様の声も届くので、従業員も楽しみながら取り組んでくれています。また、仕入れ先へは当社が目指すものづくり(ブランドコンセプト)を伝え、素材のリクエストを行うことで、目標の共有を図った上でビジネスにつなげるように取り組んでいます。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
原材料の開発費などコスト面において難しく感じています。リサイクルするとやはりコストが高くなるので手を出しにくい。SDGsは持続可能と言われますが、企業は利益が出ないと継続するのは難しいです。それと、再生素材を活用しようにも選択できる素材や色数がまだまだ少ないのが現状です。再生素材の流通量が増えていく事で価格も安価になっていくかもしれないですね。
これまでに築いてきたブランドの適正価格もありますが、現市場のニーズが追い付いていないように感じています。
2030年になっても継続して取り組んでいたい
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
ビジネス視点での 「買い手良し」「売り手良し」「世間良し」の「三方良し」を当社のリアル環境に落とし込み、継続発展させることが課題であり目標です。kawa-Reというブランドはもちろん大きくしていきたいですが、利益を優先するよりもkawa-kawaのブランド力を強化するために取り組んでいるのと、利益は寄付に回せたらと考えています。私は海が好きなので海の環境を守ってもらえるような団体に寄付したいです。
目標の数値化は難しいですが、2030年になっても継続して取り組んでいたいと思っています。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
本取り組みも含めて、今後当社が取り組む新プロジェクトを業界内に広く発信するためのお力添えを頂ければありがたいです。自社として発信や広報が得意ではないので、KanFAの中でマッチングを進めていただきたい。マッチングアプリなんかがあると嬉しいです。
また、デベロッパー等でSDGsのイベントが開催されるなら、出展させていただきたい。お洋服を買いに来られたお客様に対して、その場でカバンのお手入れをして差し上げたり、長持ちするための方法をお伝えするような場にもなればと思います。
■取材者あとがき
事業のきっかけである「もったいない」という想いがみんなを巻き込んで、そのままSDGsに繋がっているように感じました。まずは目の前にある自分たちで出来る事から取り組むという姿勢は持続可能性の第一歩であり、多くの企業のお手本になると思いました。取材協力ありがとうございました。