■会社概要 商号 三起商行株式会社 代表 代表取締役社長 木村皓一 創業 1971年(昭和46年)4月 設立 1978年(昭和53年)9月 従業員数 610名 (2020年4月現在) 事業内容 子供服及び子どもを取りまくファミリー関連商品の企画・製造・販売、及び出版・教育・子育て支援などの文化事業 ■取材日:2020年9月7日
事業の根底にある「安心・安全」。応援しているアスリート達は社員の誇りにも繋がります!
子ども服のブランドとしては国内に留まらず、世界中に沢山のファンを持つミキハウスブランドを展開する三起商行株式会社さまの取り組みについて、企画本部執行役員統括部長の平野芳紀さまと株式会社ミキハウスHCサポート取締役の藤原裕史さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
当社はもともとモノづくりを大切にする会社であり、作ったものを長く大切に使いましょう。という創業当時からの考え方が根底にあります。また我々の事業は沢山のサプライヤーさんとの繋がりで成り立っていますので4~5年前からCSR調達という観点で環境問題や人権問題に取り組んで参りました。2016年からは取引先へのアンケートの実施を行ない、我々の調達の在り方について取引先とも相談しながらその基準を組み立て、2020年1月には調達先の基準をより厳しいものに改定しており、既に80社以上から協力いただく承諾をいただいております。このようにこれまで実践してきたCSR活動の延長線上にSDGsの取り組みがあると感じています。敢えて整理すると企業向けにはCSRの観点で、消費者向けにはSDGsの観点で取り組み内容をお伝えすることが大切なのではないかと考えております。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
我々の事業の根底は安心・安全なものづくりであると考えています。また「わたしたちミキハウスグループは、子どもとその家族が笑顔になれるよう、子どものことを第一に考えたものづくりを通じて、安心できるものをお届けし続けます。」というポリシーを大切にしています。そのような考えのもと、先ず赤ちゃんに向けてはコロナ禍の数年前より独自の技術で抗ウイルス加工を施した「ピュアベール」という新製品を発表しておりました。この製品を通じて現在のお客さまの不安な状況を少しでも和らげることができればと考えております。
またコロナ禍においてご出産を控える新米ママとパパに向けてはオンラインでの出産準備セミナーを提供させていただいております。従来は百貨店などリアルの場で提供していたプログラムですが、不安なママとパパに安心して出産を迎えることができるお手伝いになればと取り組んでおります。
またマネキンやトルソーなど店舗で使用する備品についても環境に配慮した素材への切り替えに取り組んで参ります。
そして何より特徴的なのが、世界中の子どもたちに感動と大きな夢を届けるために長年取り組んでいるアスリートの支援プログラムです。きっかけのひとつとしては会社で応援していたソフトボールチームの存在や、採用決定した人材が取り組んでいた女子柔道など、どちらも当時はマイナー種目でありましたが、世の中には世界で戦える力があるにも関わらず、支援が不足しているという理由で夢を諦めざるを得ない人が沢山居ることに気付きました。そのようなアスリートの力になることで、社員も共に夢を追うことができます。お陰さまで男子・女子柔道や卓球、カヌー、空手、テコンドー、アーチェリーなど沢山の種目から活躍する選手が生まれており、社員ひとりひとりにとっても誇らしい存在となっています。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
どれが大切というよりも、全部揃った上でのそれぞれの取り組みではないかと考えております。経済があって環境への取り組みが意識できたり、環境を考えることで社会との繋がりを意識できるように感じています。SDGsを学ぶカードゲームでもバランスの大切さを実感しましたが、全部が繋がっているので、先ずは自分が起点になって何かを始めるという意識、つまり自分事として考えることが大切だと考えております。
自らがファシリテーターとなり、SDGsの理解と浸透に取り組んでいます
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
ものづくりが先行する会社なので企画本部が推進役となって進めています。具体的にはものづくりそのものをCSRの観点やSDGsの観点をもって取り組むことが重要です。そのようなものづくりの考え方を販売の現場へも浸透させていくために、人材教育を担当するミキハウスHCサポートの存在があります。例えば、来年の創業50周年に向けて、販売スタッフが改めて自社のものづくりの考え方を基本から学ぶ研修を行なったり、お客さまへの伝え方を学ぶ動画の制作等にも取り組むことで、ものづくりの段階で考えたことが販売店を通じてお客さまにもきちんと届く工夫を行なっています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
先ず私、平野と人材育成を担当する藤原が一緒にSDGsを学ぶカードゲームのファシリテーターの資格を獲得しました。その上で今年7月に本社で社員を集めた勉強会を開催。世代をシャッフルしたグループを構成し、1回約40名を対象にした勉強会を計4回開催。実施前はほとんど理解できていなかったSDGsについて、徐々に社内の共通言語になりつつあることを実感しています。
また取引先に対しては、今年1月にCSR調達の説明会を実施することで、社会と環境に対する目標や基準を明示させていただき、承諾書の提出をお願いしました。そして展示会の場でも、広くSDGsの考え方を伝える機会としています。社員が正しく伝えることができるよう簡単なテストも実施しているんですよ。
そのような活動の中から、娘が通う学校にもお声掛けをいただきまして、二人で出向きSDGsを理解するカードゲームを開催させていただきました。段々、ライフワークのようになってきましたね(笑)
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
17個のうち何番が難しいということではなく、例えば労働人口の慢性的な不足という課題に対処する為には、外国人技能実習生の雇用なども行なう訳ですが、その際に仕組みや制度が部分部分で設定されているため、サプライチェーン全体では解決できないような課題が発生します。このような事象については企業だけ、業界団体だけでは解決できない問題もあるので、法的な整備や実習生の送り出し国との連携などに踏み込んでいただきたいと感じることがあります。
2030の次は日本がリードしてワクワクする取り組みにチャレンジしよう!
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
2030年に向けてはたちまちやるべきことばかりという印象がありますが、そもそも2015年に制定された17個のテーマはネガティブな問題をニュートラルに戻すという観点にたっており、本来はさらにポジティブな社会を作るべく取り組むことが理想ではないかと考えています。そのような視点では17番の次に出てくるであろう18番、19番と新たな付加価値を生み出すようなテーマに取り組んで行きたいと思います。
当社が応援しているアスリートはよく会社に来てくれるので、社員と近い関係になっていきます。そのような機会を通じて会社が応援する選手から、自分たちが応援する選手という存在になり、選手のワクワク感が社員のワクワク感に繋がっていくのです。
我々の仕事は子ども達の成長を後押しすることが使命なので、事業そのものがワクワクするものになることを心がけたいと願っています。2030年から先の15年間は日本がリードできるよう取り組んでいけるといいですね。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
社外の方にお会いした際に、SDGsについて自社が何に取り組めばよいか分らないという声を聞くことがあります。そのような意味で各社にとってどのような取り組みをすることが相応しいのか、組合としてリードして欲しいと思います。そもそもファッション業界は社会のワクワク感をリードすべき立場であると思いますので、ビヨンドSDGsをキーワードに次の一手に繋がるよう、自発的な活動が生まれることに期待しています。
■取材者あとがき
子ども達に向けてどのような価値が生み出せるかという観点で事業を行なっておられるので、考え方のベースにCSR(企業の社会的責任)やSDGs(持続可能な開発目標)というものが備わっていると強く感じました。またあまり注目されないマイナーな競技で日々努力を重ねるアスリートを愚直に応援し続ける企業姿勢にミキハウスというブランドのファンが増え続ける秘訣があるように思いました。取材協力ありがとうございました。