■会社概要 商号 帝人フロンティア株式会社 代表 代表取締役社長執行役員 平田恭成 創業 1869年 設立 2012年10月1日 従業員数 877名 ※2022年3月31日現在 事業内容 繊維原料・衣料製品、工業資材、産業資材、車輌資材、 インテリア関連製品、生活用品、樹脂、フィルム化学品、工業製品、 包装資材、建設資材、人工皮革、クリーン製品、 その他各種機械などの販売および輸出入取引 ■取材日:2020年12月16日
企業理念に環境重視のメッセージを取り入れ、様々な事業をグローバルに展開!
あらゆる繊維・製品ビジネスをグローバルに展開されている帝人フロンティア株式会社さまの取り組みについて、取締役執行役員で技術・生産本部長の重村幸弘さま、経営企画本部 広報・IR部 部長の大里研一さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
2015年にSDGsという考え方が世の中に出てきましたが、当社ではそれよりも以前から環境対策には取り組んでいました。
ポリエステルの事業でいいますと、石油等の天然資源の枯渇を考えて当初からリサイクルの取り組みを始めていました。例えばケミカルリサイクルの素材は20年前、ペットボトルリサイクルの素材は25年前から取り扱っておりますので、かなり早い時期に取り組んだと思います。現在はエコペット®ブランドとして展開しています。
当時、容器包装廃棄物の再商品化を義務づける法律「容器リサイクル法」(略称)が成立し、当社では使用済みペットボトルを原料とするボトルto繊維のマテリアルリサイクル事業を始めました。また、その以前から、工場生産時に発生する原料クズを廃棄せず、化学分解して原料に戻し、それを社内で再利用していましたので、その技術を用いてケミカルリサイクルの事業をスタートさせました。
また、帝人グループでは2011年に人権保護や不当労働排除、環境対応への取組みである国連グローバルコンパクトにも加盟しています。
ですので、SDGsの考え方を知った時も当然やるべきことでしたので、違和感なく取り組みました。SDGsは事業を整理するきっかけとなり、どの取組みがどの番号に合致するかを割り当てていきました。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
リサイクル以外の環境に優しい取組みとして、空気や水のろ過を行うフィルターの開発、省エネの一環としてカーテン等に遮熱素材を使うことにより、冷房効率をあげて省エネに貢献する取り組み、ものづくりの観点から有害物質を使用しない取り組みや、工場で排出されるCO2の削減などに取り組んでいます。
CSR活動の一環としてCSR調達を推進しています。CSR調達基準の設定や、実態調査の実施、海外の縫製工場における強制労働や児童労働の撲滅に向けた取り組み、工場経営者向けの品質向上・労働環境を含めた環境安全への教育などにも以前より取り組んでいます。
野外フェスなどの音楽イベントやプロスポーツのスタジアムで、使用済みペットボトルやプラ容器を回収し、リサイクルする活動にも協力しています。また、名刺の素材に再生ポリエステルを活用したりしてきました。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
どれも関連していますので、どれが重点ということではないです。ただ、経済活動と環境保全は平行して考えなければならないと思っています。経済活動の中で環境に負荷を掛ける部分もあると思いますが、できるだけ負荷を掛けないものづくりを目指し、改善していくよう取り組みを進めていくことで、よりよい社会が形成されると考えます。
2018年4月に、私たちの企業理念を「私たちは新たな価値を創造し、美しい環境と豊かな未来に貢献します」に改定し、より環境を重視するというメッセージを込めました。我々はものを作り、ものを売る立場ですので、環境という考え方は切り離すことはできないですね。
SDGsのポイントは身近な目標を設定して日々実践すること
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
SDGsの担当部署というのはありませんが、環境に対して社内外への啓蒙を含めた活動を行う全社横断の環境チームや、CSR監査や環境安全の管理を行う環境安全・品質保証部があります。一方、帝人グループにはCSRを管掌する役員がおり、環境やCSR等の委員会を所管しています。各委員会は定期的に開催されており、弊社の各部署からも参加しています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
従業員に対しては、社会貢献的なイベントに参加してもらい、一緒に体験することで理解を深めてもらっています。
それと、部署毎に環境に対する目標を毎年決めています。例えば、紙資源の削減、資源を大切にしよう等です。コピー・プリントアウトの出力をできるだけ少なくするために、昨年と比較して何パーセント削減するかという目標値を設定して、毎月実績を責任部署に報告しながら日々実践しています。印刷ボタンを押す瞬間に、押してもいいのかな、とよぎるようになりましたので、これはいい習慣だと思います。
身近な目標を設定して日々実践するというやり方はSDGsに沿っていると思います。これは弊社独自の取り組みですが、従業員が自分で考えた環境に対する行動目標を書いたカードを常に持ち歩いています。環境に対する意識を常に持ってもらうために行っています。
対外的には「THINK ECO®」という名称の環境戦略を、従業員を含め、消費者の方にも分かりやすいように2020年7月に刷新しました。2030年の環境に対する具体的な目標を挙げて、消費者の方、そして次世代を担うお子さんにも理解してもらえるような内容にしました。具体的な数値を明記していますが、これは私たちの2030年度に向けたコミットメントです。ものづくりをする立場でのコミットメントですが、自社製品を活用いただくことで省エネになる商品の売上についても含んでいます。
併せてロゴマークも刷新しました。黄色が私たちを含めた社会で、青が海・空気、緑がエコロジー、赤がエネルギーを表しています。そしてそれぞれの組み合わせによって目標を分かりやすく表しています。これを環境チームが中心になって帝人フロンティアグループ全体で実現していきます。発信や分かりやすさは巻き込むための手段としては重要だと思いますし、あまり難しい、自分よがりだとダメだと思います。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
CSR監査をするにしても縫製工場だけでも800社ほどあり、毎年監査するのは難しいので、改善に向けて、より精度をあげるためにはどうすればいいか。また、リサイクル面でいえば、国内ファッション業界ではリサイクル素材に対する意識が、欧米に比べて低いです。理解と意識向上をしていただくにはどうすればいいか。SDGsでいえばジェンダーの問題です。女性の管理職をどうやって増やしていくか。
様々な課題があり、それぞれ解決できていないような事が多いのでSDGsが提唱されたのだと思います。
ビジョンを見据え、繊維でくらしを進化させます
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
環境以外でも2030年までにSDGsの目標に向かってできる事をしっかりやっていきたいと思います。
「未来の社会を支える会社」が帝人グループの長期ビジョンですので、2030年の社会に対して自社がどう貢献できるか、という観点で存在意義を出していきたいと思います。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
リサイクルや環境への意識が高くない消費者もまだまだ多いですので、その意識を向上していただくために、環境対応素材の普及策を一緒に考えていただきたいです。アパレルがサステイナブルを訴求しようとしても、採算面がハードルとなりますので、例えば「当社は一部、環境対策の商品を作っています」というように、まずは会社として打ち出しをしていただき、徐々に商品数を増やしていっていただけるような進め方を推奨していただけるとありがたいです。
組合には様々な企業が加盟されています。SDGsの取り組みも全て同じやり方で進めるのも難しいと思いますのでレベル分けをするといいのではないでしょうか。それぞれで注意すべき点などを纏めたガイドラインなどを作成されるとハードルは下がると思いますし、最初のハードルは低くないと始めにくいと思います。
■取材者あとがき
SDGsへの取り組みは従業員全員でやっていくという企業スタイルを感じることができました。来るべき社会に対して自分たちがどう貢献するか、という自分たちへの問いかけが、企業理念のとおり、SDGsを実践した美しい環境と豊かな社会における存在意義に繋がっていくように感じました。取材協力ありがとうございました。