■会社概要
商号  富士産業有限会社
代表  代表取締役 下代勝
設立  1962年(昭和37年)2月1日
従業員数 16名(グループ会社含む)
事業内容 販促用タオル・業務用タオル・各種アメニティグッズ卸

取材日:2020年9月8日

タオルはSDGsのテーマに沿った商品


泉州タオルの産地である泉佐野の地で二代に渡りタオル産業に携わっておられる富士産業有限会社さまの取り組みについて取締役社長の下代勝さまにお話を伺いました。

■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
当社の創業者は母親なのでジェンダー平等という意味では、自分が子どもの頃からそのような環境で育ったように感じています。また自宅には井戸があり、庭にもハーブや野菜など食べものになる植物が植えられていますので、水質や土壌の安全性など自然な環境の中で知らず知らずのうちにSDGs的な感覚が身についたのかもしれません。またタオルという商品はもともと耐久性があり、長期間に渡って清掃や衛生管理などきれいな環境を維持する役割を果たします。そしていよいよタオルとしての寿命を迎えた後も、ぞうきんとして私達の暮らしに役立つものであると考えております。そんな事業を営んでいますので、常日頃から回りの環境にも関心が向くことが多いですね。

■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
先ず、富士産業には実質定年がありません。最近まで86歳の従業員がおりました。現在でも20代、30代、40代、50代、60代、70代と幅広い年代の方が働いています。65歳が定年なので一旦給料は下がりますが、その後も出来るだけ長く働いてもらえるよう就業規則も含めて職場環境を整えています。また先ほどもお話しましたが、タオルはそもそもSDGs的な商材であり、新品でも使えますが使い古したものはぞうきんとしても再活用できますし、最後は土に帰ります。また製造工程においては、B品も一定量出ますが、販売及び寄付等で有効に活用しています。B品タオルがそれなりの価格で販売出来ること自体、タオルがSDGs的商材なのだと改めて感じます。また、近隣の皆さんに向けて年2回、春と秋にタオルの即売会なども開催しています。現在はコロナ禍で休止中ですが、励ましのお言葉を多数頂き、感謝の気持ちでいっぱいになります。 他にも駐車場にはレモンやバナナなど実がなる木を植えており、収穫できるようにしています。レモンはよく実がなりますので、従業員のお土産になることもありますが、バナナの木は今年初めて実がなりました。泉佐野の地でバナナの実がなるということも地球温暖化の影響のひとつではないかと少し驚いております。

駐車場にあるバナナの木

■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
この機会にSDGsの17のテーマと169のターゲットを改めて読み直してみました。その結果、環境、社会、経済という課題設定ではなく自分なりに改めてテーマを整理しました。

1.健康で文化的な生活の保障

2.地球規模での環境保全

3.平和で平等・公正な社会の実現

このように17のテーマを3つにまとめると覚えやすく、自分でも取り組みやすくなったと感じています。

下代社長のテーマ分析メモ

介護で職場を離れても大丈夫!障がい者施設も公正に取引します


■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
SDGsについては自分で考えたテーマに沿って、常に新たな課題を見つけ出し、自分が出来ることから順番に取り組むよう心がけています。

■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
当社の従業員は地元の方が多く、高齢者を介護されている方もいます。そのような状況においては勤務中であっても急な対応が必要になるケースが発生しますので、介護などの理由で職場を一時離れることは問題なしとしています。またタオルを畳む作業などを近隣の障がい者施設にも委託しているのですが、作業時間は少しかかりますが、作業内容は一般の加工所と同じ内容なので、当社では一般の加工所と同じ加工費を支払うようにしています。社内会議での重要なテーマの1つが、加工業者さんへの発注を年間を通じて出来るだけ平準化することです。閑散期に発注を増やし、繁忙期に発注を抑える。繁忙期に発注しても弊社の仕事を優先的に熟して頂ける加工業者さんは有難い存在ですが、加工業者さんにとっては他社の仕事を断り、仕事のチャンスを逃していることは明らかです。在庫リスクは負いますが、サプライチェーン維持の観点からも大切な事だと考えています。

■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
会社の回りにも気になるところが出てきます。以前地元の観光地である犬鳴山で全国の学生が集まるイベントがあると聞いたので、さっそく犬鳴山を歩いて環境調査をしてみたのですが、看板やベンチやトイレが荒れていました。そこで市役所に対して観光地として対策いただけるようお伝えしましたが、改善には山あり谷ありでした。グループ会社の従業員が、アフリカ東部のモーリシャスの繊維関連企業に招かれて出張したことがあり、今夏のモーリシャス沖合での日本企業所有の貨物船座礁・燃料油流出事故にも大変関心があります。対応を誤れば諸先輩方が築いて来られた日本とアフリカとの良好な関係に悪影響が出はしないかと危惧しています。自分の会社だけでなく、回りの環境や、町全体のことまで気になるのですが、どなたにお伝えすれば事が進むのかが分からないことも多々あり、一人の発想ではなかなかうまく行かないことを実感しています。

「泉州タオル」ブランドをパートナーシップで育てていきたい


■2030年に向けて今後目指すべきものは?
タオル産業を営む当社にとって「泉州タオル」というブランドはとても大切な存在となります。とはいえ汎用品であるタオルという商材は安売りの対象になりやすいものでもあり、ブランドイメージの構築と、実際の販売現場のイメージが合致しないため、なかなかブランド品としての認知が拡がらないジレンマがあります。世の中に求められる商品として生まれた泉州タオルがブランドとして認知されるよう、当社もタオル組合も共に長期的な視点を持って取り組んで行きたいと願っております。

■これから関西ファッション連合に期待することは?
自分の経験からも言えることですが、いくら正しいと思う事でも、一人で主張してもなかなか世間を変える事は出来ません。KanFAの会合には政治家の先生や行政の要職の方も来られますので、業界の抱える問題を解決するため、一個人、一会社の主張ではなく、組合企業全体の考え方として新たな提言をして欲しいと思います。まさにパートナーシップで目標を達成できることを期待しています。

■取材者あとがき
取材に向けて17のテーマと169のターゲットを読み直し、自らの考え方をまとめられる姿勢に頭が下がりました。社員の働きやすさに気を配り、会社の回りの環境にも目を配り、地元泉佐野という町の有り様にも関心を寄せる。取材日には庭でとんぼ、バッタ、めだか、カタツムリ、とかげなどに出逢い、自然と共生する企業姿勢を実感させていただきました。取材協力ありがとうございました。