■会社概要 商号 清原株式会社 代表 代表取締役社長 斧原正明 創業 1934年(昭和9年)11月1日 設立 1948年(昭和23年)8月26日 従業員数 374名(男性:209名、女性:165名) 事業内容 服飾資材並び繊維資材、手芸・クラフト用品の卸売販売及び輸出入 取材日:2020年8月18日
素材メーカーと協力し商品企画の視点からお客様に喜ばれるSDGsを実践
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
SDGsというテーマを掲げたのは2019年初の展示会からとなりますが、エコという観点ではすでに25年の実績があります。当社の株主は住友商事㈱様の他にも東洋紡STC㈱様があり、1995年に東洋紡グループが再生PET素材の取り組みを始めたことをきっかけに、当社でも再生素材を使ったユニフォームを展開しました。そこから環境対応に注力しています。ユニフォームは耐久性や機能性など、お客様の要望をひとつひとつ具現化することでこれまで事業を行っております。当初、価格差のあった再生素材はお客様の要望に応えるべく、素材メーカーと共に努力し通常品との価格差を無くして普及に取り組んできました。
■17のテーマの内、どのテーマに取り組んでいますか?
CSRプロジェクト発足後の1年間は、まず経営・管理のテーマにフォーカスしました。具体的にはCSR憲章の制定、健康経営や働き方改革の推進、ワークフロー(電子決裁)やでんさい(電子記録債権)導入などによるペーパレス化、各拠点のLED化の推進、対外的契約ルールの更新などに着手しました。プロジェクト活動においては、自分たちの活動が何をゴールとしているのか見失わないよう、(多少こじつけですが)全ての活動目標をSDGsの17項目に落とし込み、課題・計画化しています。また、成果が曖昧であったり、自己満足で終わらず客観的に説明できるよう、数値達成度の測定と外部のお墨付き(認証など)を得ることなどにこだわっています。中でも人が財産という理念のもと、社員の健康や労働環境、福利面などの改善に取り組みました。2019年12月に三井住友銀行より働き方改革融資を受け、2020年3月に経済産業省より健康経営優良法人の認定を受けました。また従業員が万が一、病気やケガで長期間仕事ができなくなった時に一定の収入を守るためGLTD(団体長期障害所得補償)制度も導入しました。また当社は従業員の男女比が6対4と女性の就業比率が高いのですが、直近では育児休暇後の復帰率100%など、キャリアの断絶が少ない環境作りにも取り組んでいます。
次に環境については2020年2月にbluesignⓇに卸売業として加盟しました。これは繊維業界において環境、労働、消費者の観点における持続可能なサプライチェーンを経た製品に付与される認証で、世界レベルで消費者の安全、労働者と環境への影響・負荷の抑制、資源の節約に取り組むことを目指すものです。まだ日本では加盟している企業が少ないのですが、当社では欧州でbluesignⓇに加盟しているメーカーの生地をお客様へ提案する活動を始めています。
そして社会については、お客様の流通を支える立場として、新技術を取り入れた人的・物的負荷が少なく持続可能なサプライチェーンの実現と、それを担保するBCP対策に取り組んでいます。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
先述のように、プロジェクト発足後の1年間はまず経営・管理課題を主体に進めてきましたが、今後はアパレル事業部、ホビーライフ事業部、ライフスタイル事業部、海外事業部それぞれが主体となり、経済に力を入れていきたいと考えております。具体的にはこれまでのCSR(企業の社会的責任)活動を進化させ、営業を意識したCSV(共通価値の創造)活動に注力することを目指しています。
経営直結型のプロジェクトチームでスピーディーにSDGsを推進
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
プロジェクトリーダーは管理本部の西島が担当していますが、四つの事業部、及び管理本部から課長クラス、担当クラスなど、各々数名のメンバーを選出し、現在12名でこのプロジェクトを推進しています。また当社の取り組みは経営とも直結させており、プロジェクトで議題となった内容を次の経営会議に報告し、すぐにアクションに移せる仕組みも作っています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
SDGsに限らず、これからの活動においては情報に関する感度、デジタル技術を使いこなすスキルがなければ何事も前に進まないと考えています。当社では情報システム部門が独立した100%子会社KiSを保有しており、ここから3名を社内のDX(デジタルトランスフォーメーション)化をサポートするエバンジェリスト(伝道者役)に抜擢、ともすればIT化に乗り遅れそうなシニア層を含め、業務の平準化、標準化、ボトムアップをスピーディーに進める体制を導入しました。通信環境やコミュニケーションツール、データベースの整備など、デジタル環境の整備と社内外情報連携強化を重点課題として取組んでおります。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
管理側のテーマは社内で完結出来ますし、具体的に進めやすいですが、営業側のテーマはお客様自体が試行錯誤の段階でもあり、ご期待に応えるには時間がかかると認識しています。テーマに掲げたCSV(共通価値の創造)活動を推進するには、ボタンや生地といったパーツの提供、我々が得意とするトレンド対応のみならず、消費者が求める製品のコンセプト作りから開発、生産、流通までトータルビジネスにパーツのプロとして積極的に関与させていただくべく信頼関係構築を行い、ビジネスパートナーにご指名いただけるよう取り組んでいきたいと考えております。
半歩先行く視点でこだわりのものづくりを服飾資材からサポート
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
10年後の未来を予測するのは難しい、というより正直不可能ですが、今後は実店舗での購入が減るなど消費者の購買行動が更に大きく変わり、合わせて流通形態も変化することが予想されます。我々のビジネスにおいても従来型の訪問営業が縮小し、ネットワークを駆使したデータベースの活用やインサイドセールスが重要となってきます。B2B、B2C、C2Cなどビジネスモデルも多様化し渾然一体となる中で、ベースとなる卸としての機能強化を行いつつ、一方では卸の枠に留まることなく新たなチャレンジしていくことが必要と考えます。メーカー様やお客様、更には一般消費者とも連携し、コラボして、次の市場を捉えた商品・ビジネス開拓につなげるべく、そのための機能強化を目指しております。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
アパレル業界では製品の半分を廃棄していることが問題になっていますが、今後製造量が抑制されるなかで、当然パーツ供給側も売上を維持拡大することが難しくなることが想定されます。ファストファッションが大きく成長してきた背景もありますが、そのような中でも、他者とは違う自己表現をしたいというニーズや、こだわりのクオリティ商品を長く愛着をもって使いたいというニーズは存在します。「神は細部に宿る」という言葉がありますが、我々の扱っているボタンなどのディテイル資材は製品の5%程度です。しっかりしたコンセプトの上で、こだわったパーツを採用いただき、製品をひと味違うものにしていただくことに、パーツ屋として貢献出来ると思います。ディテイルへのこだわりはコストパフォーマンスの観点でも意味があるとも思います。アパレル業界が大きな変革期を迎える中、明確なコンセプト表現やブランド育成、こだわりのものづくりなど業界全体に刺激を与えるような仕掛けを行っていただけることを期待しています。
■取材者あとがき
最大の財産が人であるという理念の元、SDGsへの取り組みが自己満足にならないよう外部による認定制度を積極的に取り入れ、スピーディーに実践されている姿が印象的でした。またいち早くbluesignⓇに卸売業として加盟するなど営業に直結する取り組みも今後の展開が期待できます。そしてSDGsのプロジェクトを経営に直結されている点が何よりも実践の鍵であると思いました。取材協力ありがとうございました。