■会社概要
商号  一般財団法人カケンテストセンター
代表  理事長 眞鍋 隆
創業  1948年(昭和23年)12月15日
設立  1948年 (昭和23年)12月15日
従業員数 1,492名 ※2025年3月現在

主な事業内容 繊維製品・皮革・紙・ゴム・プラスチック・産業資材など、幅広い分野の試験を行う第三者機関。商品の安全・安心を支えるとともに環境問題や人権問題についての支援を実施。

■取材日:2025年 12月 10日

顧客の声に応え続けて


繊維製品をはじめ、幅広い分野の製品について、公正・中立な立場で試験・検査・研究開発を行い、品質や安全性を評価されている一般財団法人カケンテストセンターさまの取り組みについて、川口ラボ次長の石川陽平さま、広報室室長 竹内大歩さまにお話を伺いました。

右:東京事業所 川口ラボ次長 石川陽平様
 
左:業務部 広報室室長 竹内大歩様


■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
様々な取り組みを行っておりますが、そのいずれも顧客ニーズが取り組みのきっかけです。当センターのSDGsアクションの起点は、一貫して「顧客ニーズへの対応」にあります。具体的には以下の3つの側面が挙げられます。
1.市場環境の変化と顧客からの要請

取り組みが具体化した大きな要因は、約15年前から顕著になったアパレル業界を中心とする市場の変化です。かつての 「安価で使い捨て」の流行に対し、近年は商品の耐久性を高め、ライフサイクルを長くすることにより環境負荷を低減したいというメーカーのニーズが急増しました。また、一部のクライアントからは、サプライチェーン全体の人権・環境規制への対応を強く求められるようになりました。これらの要求は、「対応できなければ将来的に取り残される」という強い危機感と、「監査を行う組織は適切に機能していなければならない」という使命感を伴う経営課題となりました。


2.個別対応から専門部署の設立へ

こうした外部環境の変化を受け、組織は従来の業務の延長線上としてSDGsを捉え、段階的に体制を整備してきました。2021年にはCSR推進室を立ち上げ、さらに2023年には環境負荷削減に対応するサステナブル推進室を新設しました。かつては個々の営業担当者が顧客からの相談に個別対応していましたが、課題が複雑化(有害物質管理やLCA(ライフサイクルアセスメント)算定支援など)するにつれ、組織的な知見を集約し、事業として正式に推進する形に進化しました。


3.内部統制と事業継続(BCP)の観点

SDGsへの取り組みは、対外的な要因だけでなく、組織の持続可能性という内部的な動機からも進められました。技術力の流出を防ぎ、優秀な人材が働き続けられる環境を作るため、育児支援や福利厚生の整備、社内規定の適正化といった人権・労働環境の改善を10年以上前から取組んできました。例えば、以前は出産を機に退職するケースが多かったものの、現在は管理職を含め、復帰して働き続けることが当然の風土となっています。

できることを、できる形で



■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
① 耐久性評価とLCA算定を通じた環境負荷低減のサポート

主要事業である試験・検査を通じて、製品の長期利用と環境影響の見える化を支援しています。当センターは化学繊維の検査をルーツに持つ強みを活かし、製品を長く大切に使うための耐久性評価(耐光、耐候、高温多湿耐久、繰り返し強度)を行うことで、サステナブルなものづくりを支えています。
また、環境負荷を評価するLCA算定やEPD(環境製品宣言)の取得支援にも注力しています。これはまず、当センター自身がサプライチェーンの一員であると認識して、自社の排出量(Scope1・2・3)を算定し、情報開示したことから始まりました。苦労して得たノウハウを、現在はコンサルティングや算定代行、算定結果の検証業務として提供しています。単に計算するだけでなく企業様が自立して取り組めるようソフトウェアの活用指導も行っており、業界全体の環境意識の底上げに貢献したいと考えています。

脱炭素経営EXPO 出展風景

② 繊維業界の持続可能性を守る「伴走型」の人権監査

人権問題への対応として、CSR監査やJASTI(繊維産業の監査要求事項・評価基準)監査などの監査事業を通じて、サステナブルな労働環境の整備をサポートしています。この取り組みの根底にあるのは、単なるルール遵守の確認ではなく、日本の繊維業界の持続可能性を守るという強い意志です。人権監査は非常に項目が細かく、工場様にとっては大きな負担となります。無理に対応を強いて工場が廃業に追い込まれてしまっては本末転倒です
。 そのため、当センターの監査員は「日本の繊維業界を持続させていくための監査」という意識を持ち、監査を単なる検査ではなく、工場が生き残るための伴走型サポートと捉えています。監査を通じて、事業継続のために必要な取り組みという理解を少しずつ深めていただくことで、やらされ感から自発的な意識改革へつなげていくことを目指しています。

JASTI監査風景

③ デジタル化の推進と働き方改革

社内においては、業務効率化と環境配慮を両立させるため、デジタル技術を活用した業務改革を進めています。 特に大きな変化があったのは試験現場です。従来、試験データは紙の用紙に記録していましたが、現在はデジタル端末を現場に導入し、試験結果を直接デジタル化するスタイルへと徐々に移行しています。当初は「紙の方が楽だ」という声もありましたが、検索性の向上やデータの即時共有といったメリットを提示し、部署ごとに柔軟に運用することで、着実にデジタル化が浸透しています。
また、人材の持続可能性という観点から、男性従業員の育児休業取得を推奨しています。昨年頃から、2ヶ月程度の育休を取得する男性社員が当たり前のように現れ始めました。かつては取得しづらい雰囲気もありましたが、現在は上司や周囲が積極的に後押しする風土に変わっています。こうした「誰もが働き続けられる環境づくり」は、当センターの技術力を維持し、次世代へ繋いでいくための大切な土台となっています。

■現在の取り組みはどのテーマに該当しますか?


知ってもらうことから始める



■SDGsへの取り組みにより、どのような変化がありましたか?
SDGsへの取り組みを機に、当センターの役割は単なる試験・検査の枠を超え、お客様の課題を包括的に解決するトータルサポートの提供へと大きく進化しました。特に、企業様から「何かに取り組みたいが何から手をつければいいか分からない」といった漠然とした相談を受ける機会が増えています。それに対し、海洋プラスチック等の環境試験やLCAの算定、海外の法規制や有害物質規制対応など、実務に即した具体的なメニューを提案し、お客様と伴走するコンサルティングのような役割を担えるようになったのは大きな変化です。
また、社内では人への投資と技術継承の意識が一段と高まりました。昨年からは各分野で知見を有する専門家職員にて教育チームを立ち上げ、若手に直接技術を伝えるカケンアカデミーを始動させました。単なる座学ではなく、フェイストゥフェイスで実務に入り込み、検査技術や試験機の管理といった、信頼性の根幹を伝承する機会を設けています。こうした活動を通じて、従業員一人ひとりが自らの技術を未来へつなぐべき価値として再認識し、組織全体の活性化につながっています。 さらに、環境分野の専門家や語学に堪能な人材の採用が進んだことで、社内に新たな視点やシナジーが生まれています。もともと業界の仕組みを自ら作り、変革してきたというチャレンジ精神が根底にありますが、SDGsを共通言語にすることでその姿勢がより強固なものとなりました。現在では自社内にとどまらず、大学などの教育機関を巻き込んだ外部との広範なアライアンスも増加しており、業界全体をリードしていくという自負を持って活動の幅を広げています。
カケンアカデミー風景


■SDGsアクションの推進について課題と感じていることはありますか?
SDGsアクションを推進するなかで、私たちが直面している大きな課題は、自社の取り組みや提供しているメニューの認知度が、社会や産業界においてまだ不十分であるという点です。私たちの事業や検査内容は非常に専門性が高く、一般の方や他業種の方から見れば少しマニアックに映る部分があります。そのため、自分たちの活動がどのように社会課題の解決につながっているのか、その本質的な価値を広く正しく理解してもらうことの難しさを日々感じています。
しかし、私たちは、知ってもらうことそのものが産業を強くし、社会貢献につながる重要なプロセスであると考えています。単に待ちの姿勢でいるのではなく、ホームページのSEO対策、新聞媒体でのPR、さらにはユーチューバーとのコラボレーションといった、多角的な発信に挑戦しているのはそのためです。こうした試行錯誤は、自分たちの専門的な役割が世の中の衣服や生活にどう結びついているのかを、改めて私たち自身が再定義する機会にもなっています。
また、単に情報を拡散するだけでなく、たどり着いてくださった方々がより相談しやすい仕組みを整えることこそが、社会を変える鍵になると信じています。認知を広げる過程で得られる外部からのフィードバックを大切にしながら、業界の枠を超えて「何ができるか」を問いかけ続けること。そうした社内外の対話の積み重ねが、専門性を確かな社会的価値へと昇華させ、持続可能な産業の未来を支える土台になると考えています。


■SDGsの推進に際し、関西ファッション連合に期待することはありますか?
SDGsの推進は、一法人単独の努力だけでは限界があります。だからこそ、関西ファッション連合には、貴組合の幅広いネットワークと高い発信力を通じて、業界全体が連携して取り組むためのプラットフォームとしての役割を担っていただきたいと考えています。
具体的には、当センターが持つ専門的な評価技術と、加盟企業が求めるサステナビリティへの取り組みとを効果的につなぎ、業界全体の技術的・倫理的レベルの向上に貢献していただくことを期待しております。


■取材者あとがき
カケンテストセンターのSDGsは、顧客や業界からの要請に応えるための付加価値として始まり、現在ではしっかりと事業に繋げておられます。伝統的な繊維業界の検査機関が、時代の要請に応じて持続可能な社会を支える専門家集団へと変革されてきた姿勢から、大きな勇気をいただきました。取材協力ありがとうございました。